菩薩

エレメント・オブ・クライムの菩薩のレビュー・感想・評価

3.5
トリアーの作品の中じゃ一番凝りに凝りまくってる気がするが、同時に一番語る事を拒否している気がする。雰囲気的にはもはやソクーロフなんかに近い、つかソ連って感じ。「犯罪の原理」に従い事件の解決に挑む捜査官、犯罪者の心理に寄り添い過ぎたが為に、自らもその闇に堕ちていく。人は誰しも犯罪者になり得る素質があるって事を言いたいのなら、『ハウス・ジャック・ビルド』の人は誰しも心の中にシリアルキラーを飼っているのに通じるものがあるが、それを発動させぬ為の手段、もしくは発動させてしまった後の解決手段が一様に「死」でしかないってのに、この時期からトリアーの人類に(もしくはヨーロッパ)に対する絶望的な眼差しを感じる。悪夢的ノワールなる表現がしっくりくる何処までの幻想的な作品、催眠状態で語られる凄惨な事件と心の傷、デビュー作から病み病みのトリアー、観ているこっち側も催眠術ならぬ催眠術にかけられるなかなか厳しい案件。ラストに出て来るスローロリスが何を表すか、可愛い顔してあいつ毒あんだよな。ボルヘス、ロブ=グリエ的迷宮、確かに…。
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