はちわる

おもひでぽろぽろのはちわるのレビュー・感想・評価

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)
4.5
見終わってとんでもなく嫌な気持ちになった。なっている。

幼少期の思い出と呪い。
愛想のいい子どもを懸命にやっていた。クラスでも、家族でも。声の大きなクラスメイトや、「父の威厳」の前には、そんな頑張りはまるで無力で、打ちひしがれながらもあえてその打ちひしがれに気付かないふりをしながらしか生きていくことができなかった。
そんな思い出がつらく思い出された。

大人になることは諦めることが増えていくということ。
他人と思い出を“完全に”共有し交わることの不可能さ。不可能さゆえに呪いを解くことができるのはどこまでいっても自分なのだということ。分かりあうことを諦め、分かりあいの解像度を下げていくことでしか「分かりあえている」という状態を作り上げることができないということ。世の中「そういうもんだ」と思っていくこと。
多かれ少なかれ誰でも(最悪なことに自分にも!)トシオをやらなくてはいけない瞬間があり、どうあがいてもトシオにしかなれない。
諦めと折り合いでしか、今を生きることはできない。

ジブリ映画は苦手だと思っていたけれど、ここまでしっかり嫌な気持ちになれる作品があるとは。ジブリ映画で一番好きな作品になった。
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