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おもひでぽろぽろのyoshiyaのレビュー・感想・評価

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)
4.8
何度観ても、切ない想いになります。なんでだろう? 心がぎゅっと苦しくなる。圧迫されて、押し潰されそうで、淋しい気持ちになる。だけどその中にノスタルジーを感じるんです。暗くて閉じられた雰囲気の中に、淋しいけれど柔らかな、暖かな優しさがある。この映画は、きっと小さな頃の、そんな言葉にならない思いを、だけど心で強く感じている、そんな想いをとても繊細に、丁寧に、描き出している作品なのだと思います。暗くて淋しくて、先に何が待っているのかわからないけれど、恐る恐る、時にはぼんやりしながら、一歩ずつ、やみくもに進んでいた、もがいていた、泳いでいた、あの頃の小さな記憶。風景。思い出。閉じられた世界、子供の世界、だけど強烈に、そして繊細に憶えていて、今でもふと、強く蘇ってくる、あの光景。この作品を観ていて、僕はいつも胸が苦しくなります。時代は違うけれど、高畑さんは、心の奥の、忘れていた、眠っていた引き出しを、記憶を、匂いを、優しさを、風景を、ジクジクと溢れ広がるように、流れ出すように、滲むように、想い出させてくれます。とても素敵な作品です。小さな頃から何度も何度も観た作品。“ひょっこりひょうたん島”。父、母、2人の姉、広田くん、あべくん、トシオさん。彼ら一人一人が、僕の心を、強く揺さぶります。金曜ロードショーの録画VHS、途中から始まる『おもひでぽろぽろ』。時々画面がぶれて、白い横線が入る、そんな古い、擦り切れたビデオ。寝転びながら、ぼんやりと、また観てみます。麦茶を飲みながら。果物の王様、バナナを食べながら。
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