Melko

千夜一夜物語のMelkoのレビュー・感想・評価

千夜一夜物語(1969年製作の映画)
3.2
♪ Aldin, Aldin, here comes the man called Aldin〜

クレオパトラの前作も見てみた。
2時間ちょい。長かった〜。3回に分けて鑑賞。
これはプログレ映画だ。

惜しい!というか、もったいない!
作画と音楽はめちゃくちゃ良い。さすが日本初の大人のためのアニメーション映画
ものすごいチャレンジ精神と意欲を感じる

荒れ狂う海は実写、バグダッドの街並みは大規模な模型、竜巻は洗濯機のドラムの渦巻き。そこにイラストが足されることにより、ダイナミックさと臨場感を演出。マルチプレーンカメラでの撮影、背景に奥行きが出てる。各シーンでテイストが異なるのは、任せた作画担当者の作家性を重視した試みなのだとか。なるほどね!

大人のためのアニメなので、本編中まぁまぁな頻度でお色気場面が出てくる。それを直接的な描写ではなく、抽象画にしたり線だけにしたり、あの手この手で絵が工夫されている。

そして音楽との融合。
本編中の大事な場面でかかるBGMも印象的だけど、この融合が上手くいった最たる場面は、冒頭スタッフロールから場面変わって砂漠の中を主人公アルディン(=シンドバッド)が歩いてくるシーンだと思ってる
アラビアの拡張高い民族音楽から、ブルージーなGS風味のプログレに移行するなんて、誰が予想するだろうか。この場面のアルディンにはアウトラインがないモダンなアートになっているのと、歩くアルディンを様々な角度から映すように何枚もカット割りしていて、オシャレなアメコミ風味になっている。この最初のシーンでヤラレた。シビれたー!
一気に引き込まれたのだが…

その代わりというか、ストーリーが死ぬほどつまらない。笑
というか、結局何がどうなって何を伝えたかったのかがサッパリわからん。
演出にこだわった結果、ストーリーがおざなりになってしまったとしか思えない出来栄え。
キャラ設定もあまり良くない。
悪役は一貫してて良いのだけど、主人公アルディンが人間くさすぎて主役に据えるには鼻につきすぎる。
容姿を見て一目惚れし一夜を共にした女が死に、悲しむのかと思いきや、女だらけの島で享楽に溺れ…事情知らずとはいえ実の娘に恋するとか…(しかも理由が、死に別れた女と同じ顔だったから)
いい加減で女にだらしなさすぎるし、かと思えばすごい達観したこと言って、自分を殺そうとした奴を許したり。キャラがブレブレ。アスラーンとジャリスも秒で恋に落ちるし(みんな結局大事なのは容姿か?)感情移入が誰にもできないから見進めるのが大変だった。
おまけに不自然に長いお色気シーンがあったり、「今何を見させられてんだろ」時間が長かったのも頂けない。
調べれば、脚本とプロットのプロセスが複雑すぎたらしく、、な、なるほどね、、

あの謎の宇宙人みたいなキャラ、要る?
完全に物語を間延びさせてる気がするが、、

声を演じた俳優たちの演技は良かった◎
特にやはりアルディン役の青島幸男は、飄々としている喋り方がすごく似合ってた。
岸田今日子は美女役にはちょっと声が艶不足だった気がする。

数奇な冒険を経て、アルディンは。
「王様か。ちいせぇちいせぇ。俺としたことが。さぁてと。人生、王様の次は何だろね?」

ネタバレまで記載、参考になった丁寧なレビュー▼
http://mogamiya-forth.cocolog-nifty.com/dailylife/2007/01/post_cbeb.html
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