Eike

ブレックファスト・クラブのEikeのレビュー・感想・評価

ブレックファスト・クラブ(1985年製作の映画)
4.3
1985年の作品ですからもう37年も経ったのか…。

アメリカのエンタメ雑誌:Entertainment Weeklyで「ハイスクールムービーTop20」でオールタイムのNo.1に選ばれた作品。
公開当時10代だった観客たちも今や社会の中心にいる世代となっているわけですから本作の評価が高いのも当然かも知れませんね。
確かにアメリカの青春映画として本作がリストアップされないというのはちょっと想像しにくい気がします。
でも改めて見直してみると「青春&学園ジャンル」の作品としてはかなりユニークな作りなんですね。
一応「コメディ」の体裁をとってはいますが、特に何も起きないと言えば何も起きないんですね。

それぞれ訳あって土曜日の朝に罰として呼び出された5人の高校生。
「お嬢様」「ガリ勉(死語ですね)」「ワル」「ゴスっ娘(これも死語かな)」「体育会系」。
普段は交わることのない彼らが同じ土曜の一日を共有することでどんな変化がそれぞれの心に生まれたのか?

もちろん「娯楽映画」ですから甘々なところも多々あります。
それは否定できませんが、彼らの境遇や台詞の端々にはまぎれもない本音が滲み出ているところも多々見受けられるのです。そしてそれが如何に新鮮に感じられたことか。
特に何も起きない物語だと書きましたがそれでいて十分面白い映画になっているのも考えて見れば大したものです。

監督・脚本のジョン・ヒューズは本作の一本前の「すてきな片思い:"Sixteen Candles"」(1984)で監督デビューを果たした訳ですが、つづくこの第2作で圧倒的な支持と共感を得てこの後、怒涛のように一連の「青春映画」を作り上げました。
こうした「青春・学園映画」は今や絶滅危惧種とも言えるジャンルな訳ですから逆に「今の」若い世代の方の目にはどう映るのかちょっと興味が湧きます。

続編が作られるって噂もずいぶんあったんですがヒューズ氏は2009年にお亡くなりになっている訳で残念です。
ディレクターズカットでは2時間半あったのものをスタジオ側が一方的に97分に切ったということで「完全版」も望まれていたのですがヒューズ監督は結局認めなかったそうです。

本作が星の数ほど作られた80sのアメリカ産青春映画の中でいまだに輝きを失わないのはやはりヒューズ監督のアプローチによるところが大であったのでしょうか。
監督は出演者たちにアドリブや独自のアプローチ&解釈を打ち出すことを積極的に奨励していたそうです。
そして実際にそうしたシーンの多くが最終的に採用されている訳です。
ラスト、土曜日の終わり、ジャド・ネルソン扮するベンダーが夕方の気配が濃くなりつつあるフットボールフィールドを歩きながらこぶしを突き上げるシーン、バックに流れるSimple Mindsの”Don’t You (forget about me)"の効果もあって、このラストシーンは正に80年代アメリカ映画を象徴するシーンとなったわけですが、これもアドリブだったそうでびっくりです。
懐古趣味と言われようが、こうした作品と時代を共有できたことはやはり幸せなことなのだと思う今日この頃であります(笑)。
Eike

Eike