半兵衛

処女の生血の半兵衛のレビュー・感想・評価

処女の生血(1974年製作の映画)
2.9
吸血鬼ドラキュラをパロディにしたような作品ながら、同じ監督&キャストによる『悪魔のはらわた』に比べると結構真面目な造りになっており舞台となる屋敷を捉えた映像もゴシックホラーらしい雰囲気をまとっている。

今回ドラキュラを演じるウド・キアは処女の血が周囲から無くなってしまっており終始血が不足しているためなのか盤若な優男として描かれており、現代に馴染めず滅び行く運命にさらされた怪物像に仕上がっている。そんな彼が法王のいるイタリアなら結婚まで純潔を守るだろうと婚約者探しを名目に訪れるが、みんな性に関しては開放的なので目的の処女の血が吸えず右往左往していくのがコミカルさと悲哀さを醸し出しドラマに独特な味わいを出している。

そんな吸血鬼が訪れるイタリアの貴族一家は傍目にはいかにも由緒ある一族に見えるが、実際は主人のギャンブルが原因で困窮しており娘たちも畑を耕して食料を得ている有り様。この映画ではそんな二組の貴族を通して、古びた権威を引きずり生きている人間をおちょくっているのが妙味。

か弱い吸血鬼と対峙する存在として、イタリア貴族に仕えながら現代の世界の状況に通じ貴族の娘たちとフリーダムな肉体関係を結んでいる使用人の男が登場する。溌剌とした肉体もありながら頭も回る彼は貴族の正体に疑問を抱き、彼を追い込み古きものに引導を渡していくという役割を見事に果たす。でも結婚に失敗(?)して戻ってきた長女を馬鹿にして、吸血鬼にターゲットにされた処女の四女を身を守るという名目で犯そうとする外道な奴なのであまり共感できない。

前半は結構しっかりとしていたが、中盤から話が単調になってきて飽きてくる。終盤に至っては様々な伏線が悉く無視され、登場人物が次々と無意味に死んでいくのでポカンとしているうちに突然終了してしまう。

『悪魔のはらわた』同様、やはりウド・キアは体を破壊されてしまう。でもグロいというより何故か笑えてくる。

ちなみに血液は実は母乳と同じ成分で出来ており、吸血鬼はそれを代用して平和に生きていくことは可能だけれど…処女の乳を吸う怪物というのはあまりにも変態すぎて自身のプライドが許さないだろうな、きっと。
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