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時計じかけのオレンジのみのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
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観終わった後心がなんかザワザワするこの感覚は、原作の小説を読んだ時も同じだった気がする。

この主人公みたいな根っからのワルみたいな人って実在するのかな。
フィクションには結構出てくる存在だけど、自分の欲望のために暴力を振るうことに良心の呵責を感じないどころかむしろ快感を見出す人っているのだろうか。
私は幸いにも今はいい人に囲まれて暮らせていて、人に親切にしようというのが当たり前の感覚として?ある、そういう前提の中で生きてこれてたから、「裕福な家庭で愛されて育ち何不自由なく暮らせるのに、それでもなお己の快楽のために他人をいたぶる根っからの悪」って感じのこの主人公のような人間が実在するなら怖すぎると思った。関係あるかわからないけど前から気になってた「ケーキの切れない非行少年たち」読んでみよう。

ナチスの映像が出てきたりして、全体主義を批判をする意図が垣間見えるけど、さらにその全体主義を批判する作家とか活動家すらもこの映画ではある種の悪として描かれるのがおもしろい。全体主義の政府を打倒するという理想のためだとしても、個人の幸福を蔑ろにして人を都合良く利用する行為は良くない。目的が善でも、それを実現する手段が悪ではいけないということか。

この映画には社会への絶望感的なものがめっちゃ描かれてる気がする。医者は病棟で仕事もせずにナースとインアウトしてるし、女性がただの鑑賞物としての存在に成り下がってるシーンがいっぱいあるし、最後のシーン政治家もやっぱり主人公をちゃっかり利用するし、主人公の悪は矯正失敗する。クソデカため息。

牧師のセリフ「選択の自由を失った人間はもはや人間ではない(うろ覚え)」ってことが一番伝えたいことなのかなと思ったり。ハンナアーレントの映画でも似たようなセリフあった気がする。全体主義、ファシズムに支配されないためには自分の頭で考えること、考えることをやめないこと。

感想をまとめるのに語彙力も知識も足りてないけど、一言で言うと心がざらついた。映画としてどうなのか?という評価は今の私にはできない。考えさせられるという意味では今の私にとって良い映画だった。けど全体的に女性の描かれ方は引っかかるなあ。構造的暴力を描いてると言えばそこまでかもしれないけど。。後味悪い。
み