何度鑑賞してもキューブリック監督によるアーティスティックなバイオレンスの世界に圧倒され、感動したとか面白かったとかそんな生易しいものではない衝動的な感情が引き出されて戸惑っているうちに気づけばエンディングに。そういう無二の体験を公開から50年たってもさせてくれるという意味ではとんでもない傑作と言える。
近未来という設定をそれらしい建物だったり服装だったりと監督やスタッフのセンスのみで押しきってしまう手腕が凄い、 それが強引にならず観客に納得させる話術はもっと凄い。
過激なバイオレンスのみ話題になっている本作だけれど、ユーモアな場面を随所に置いたりや直接的な表現を回避したり
しているので作品のバランスは良い。あとラストのオチや当時の国内の政治状況を風刺したような展開などがイギリス映画らしい。
「Singin' in the Rain」を歌いながらマルコム・マクダウェルが暴行を繰り広げるシーンは『雨に唄えば』を見ていればこの映画のやばさを更に実感させる、そんでもってラストにまでこの歌を流すのも良い意味でイカれてる。
それにしてもあれだけ凶悪な小悪党だったアレックス君にいつしか共感してエンディングでほっこりしてしまうのはなぜだろう。