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時計じかけのオレンジのkoheiのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
4.3
《社会は自ら生み出した異物を拒絶する》

キューブリック2本目。もうすっかり虜になってしまった。

例に漏れず多様な解釈の成り立つ映画だと思うので、他人の意見を見て影響される前に自分の解釈を記しておく。


主役を演じたマルコム・マクドウェルが音声解説でも語っているが、今作は若者による若者のための映画である。それはこの映画が撮られた1960〜70年代のイギリスの若者という意味ではなく、いつの時代にも現れる普遍的な若者を指している。今作は、その当時でも過去でもなく、近未来を舞台にしている点が逆に感情移入しやすく素晴らしい。

そして当然のようにこの普遍的な若者像は、現代の日本の若者ともマッチしてしまう。実験をして男性性ひいては人間性をも消失させてしまう姿(加えてその後の失敗)は、日本のゆとり教育という実験に重ねてしまった。子供時代の教育(実験)がいかに大きな影響を及ぼすのかという問題が掲示されているように見える。実験が失敗した後に大人たちが親身になるのがブラックコメディとして面白い。

いつの時代も大人は若者に期待し、同時に危険視する。ひとりひとりと向き合わずに大人に同化させていく。この映画は奇抜で超暴力(アルトラ)的だが、極めて普遍的な「若者と社会」を描いていてかなり面白かった。


キューブさん②
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