こたつむり

マイ・フェア・レディのこたつむりのレビュー・感想・評価

マイ・フェア・レディ(1964年製作の映画)
2.8
ダメな男に騙された…そんな気持ちになった作品。

約3時間…という長尺の映画ですが。
時間配分のバランスは悪いと感じました。前半はとても丁寧な描写で退屈さを感じさせないのは見事な限り。特にオードリー・ヘプバーン演じる《花売り娘》を観るだけで口角が上がるのは、さすがの存在感。

しかし《花売り娘》の彼女が。
パーティに参加した後は一転して雑な展開になるのです。勿論、物語の基本は起承転結ですからね。フィナーレに向かって急流を下るような展開になるのは仕方がないとしても…しっかりと仕込みをしておくべきでした。

出会いと別れ。笑顔と哀しみ。努力と成功。
それらは対比して配置するからこそ活きるもの。正直なところ、オープニングで“花の静止画”を5分間も続けるならば…その時間を他の場面に充ててもらいたかったです。

また、一部の価値観については。
時代を感じるものがあり、肩が下がる思いでした。特に《教授》は口が悪いだけの人物だと思っていたのですが…まさか、全ての発言が“本気”だったとは…。んー。様々な解釈は出来ると思いますが、あの“着地点”は男性上位主義の極みじゃないでしょうか。

それと、本作のミュージカル部分については。
思っていたほど抵抗はなかったのですが、楽曲に関しては好き嫌いが分かれると思います。特に《教授》が歌う曲については、メロディに抑揚を感じることが出来ず、冷めた目で観ていました。というか、単純に《教授》のことが最初から嫌いだったのでしょう。

だから、彼を除いて考えれば。
オードリー・ヘプバーンを筆頭に《大佐》や主人公の《父親》、そして《教授》の母親。誰も彼もが魅力的だったと思います。イギリスの階級社会を描きながらも、嫌味な部分が少ないのも好印象。ロマンティックな物語に社会メッセージを乗せるのは野暮ですからね。

まあ、そんなわけで。
オードリー・ヘプバーンを楽しむ物語として彼女に感情移入してしまったからこそ…やりきれない気持ちになったのでしょう。やはり、彼女に似合うのは、グレゴリー・ペックのような"紳士”。少なくとも《教授》は典型的なダメ男ですよ。うん。お父さんは認めても、僕は認めません(何様か)。
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