垂直落下式サミング

地獄へつゞく部屋の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

地獄へつゞく部屋(1959年製作の映画)
3.5
百万長者が5人の客を自分の所有する幽霊屋敷に招待する。無事そこで一晩過ごせば1万ドルの大金を得られるが、客たちはさまざまな恐怖に襲われる。
ひとりでに閉まる鉄の扉、揺れるシャンデリア、緊急地震速報みたいな不安をあおる劇伴、オバケ屋敷な雰囲気がたれ込める。金に目が眩んだものたちが、恐怖の一夜を過ごすことになるのだ。
序盤で、度胸試しの参加者たちの人間模様が描かれるのだけれど、お客さんは老夫婦と中年夫婦と若いカップルという3組の男女ペア。青年期から晩年まで、人の一生の歩みをあらわしていそうなキャラクターの配置だ。そこに、屋敷の所有者である管理人がひとり。この人が、配偶者のいない孤独をその身一つで抱えている。
カップルの中では、お金持ちで落ち着いていそうだけど冷えきった関係の夫婦がお気にいり。なんだか憧れるオトナなカンケイ!
静かに嫉妬に狂う男と、そんな夫を軽くいなしながらハラにイチモツある女。この二人が今やもう修復不可能なくらい腫れて爛れて、今にも天秤の釣り合いが崩れそうなくらいにアンバランスな感情を抱えながらヒヤヒヤするやりとりするから、この妖艶な関係にゾクゾクした。たぶんお互い真っ直ぐに愛し合ってた時期もあるだろうに…。奥さんはやめに死んじゃったのが悲しかったな。夫が冷たくなった彼女にかける言葉もまたね…、業が深くて、イイんですね…(癖)
棺桶みたいな小箱に拳銃を入れてるのも、ちょっとオシャレで「私は銃はいらないから」と最初に棺桶の蓋を閉じられるのがアップになることで、最初の犠牲者を示唆。表現主義的な小物使い。
おばけとしては、キャスター台車付きスライド式おばあちゃんがMVP!足を動かさないことでノーモーションの移動を可能としている。人間モロ見せで幽霊を演じる試みであるから、90年代のジャパニーズホラーが目指したものの源流がここにもあるんだなぁっと。
もうひとつ、ホラーとしての見所は女優の絶叫。スクリームクイーンという言葉があるくらいだから、ホラーと言えばオンナのコの悲鳴っしょ!っていうノリが行き着くところまで行っちゃったカンジで、絶好調なサンシャイン池崎くらいの声量でパナイ。
1958年の時点で、カン高くて大きい声がマストな絶叫芸の到達点とも呼べる声量を目撃せよっ!キャアァァアアアアアアアアアアッ!ゥワャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!音量調節せんと鼓膜パァンなるで!ジャースティス!