前に観たことあるかなと思ったけれど、まったく何の記憶もないのでたぶん初見だろう。卒業1年前のモラトリアム期の医学生たちの日々を描いた作品だが、前半は下世話なエピソードが多く、それも悪趣味ギリギリなシーンもあってあまり乗れない。ほとんどの男子がカッカしてすぐに口論になったり、喧嘩っ早かったりするところなども時代を感じて古臭く見える。恋人を(それも非正規の医師の手で)中絶させてしまったのに恋人やその家族から何も咎められず、逆に結局そのことで病んでしまって「傷ついた僕」みたいな形で終わるのも気になり、終始「男の子目線の青春映画」という印象が抜けきらなかった。医学そっちのけで映画に没頭する青年(おそらく監督自身がモデルだろう)やゴダールへのあからさまなオマージュに、あふれる映画愛は伝わるけれど、自主映画的な青さも見えてしまい、先に観た『もう頬づえはつかない』との洗練度の違いを感じてしまう。
キャストは意外なくらい豪華で、のちの時代に脇役として名を馳せる人々がずらりと登場する。阿藤快や内藤剛志などは最初誰かわからなかったくらいイメージが違う。若き柄本明はまるで今の柄本祐が演じているようでちょっと笑ってしまった。奥様の角替さんも出てますね。鈴木清順や手塚治虫まで出演しているのにはびっくり。この監督が愛される人物であるのはわかりました。