爆裂BOX

未知空間の恐怖/光る眼の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

未知空間の恐怖/光る眼(1960年製作の映画)
4.0
英国の小さな村ミッドウィッチの全生命がある日、仮死状態に陥り、数時間後に蘇生するという怪現象が起きた。その後、仮死状態になっていた村人のうち、出産可能な女性は全て妊娠する…というストーリー。
ジョン・ウィンダムの「呪われた村」の一回目の映画化です。95年にジョン・カーペンター監督によってリメイクもされています。
やがて村には男女各6人の子供達が生まれるが、子供達は皆、髪と瞳の色が同じで、他人の心を読み、相手を意のままに操る超能力を持っていた。やがて村の住民と子供達は激しく対立するようになる、という内容です。
電話で会話していた男が突然動きが止まり、そのまま倒れ、飼い犬も倒れており、更に町中で死体の様にあちこちで人が倒れていて、聞こえる音も単純な機械の作動音だけで静寂に包まれている冒頭は世界の終末の様な雰囲気が漂っていて一気に引き込まれます。異常に気付いた警官や軍隊が村に近づくも、ある一定の境を超えると同じく機能停止して倒れてしまう所や、カナリアを入れた過去を近づけたり、ロープを体に巻いた兵士を進入させたりして対策を立てようとする所も面白いですね。空から偵察していた飛行機も一定の高度まで下がるとパイロットが意識を失い墜落してしまいます。やがて、牛が目覚め、村人達も呆然自失のような状態ながらも起き始める所も唐突に異変が始まり、また唐突に終わったのかと感じさせます。
そして異変時に村の出産可能な女性が全て妊娠しており、不貞を疑われる者や、経験がないのに妊娠して混乱と不安に襲われる者、同じく混乱して苦悩する家族の姿が描かれます。主人公ゴードンは晩婚で子供が中々できずにいた所に妻アンシアが妊娠して喜びに沸くも、得体のしれない存在の子供かもしれないと恐怖の感情に変わって苦悩する姿も丁寧に描かれます。自分達の日常がジワジワと得体のしれないものに侵食されていく恐怖は「ボディ・スナッチャー」を彷彿させますね。
やがて生まれた子供達はプラチナブロンドに端正な顔の少年少女達ですが、赤ん坊の頃から母親がミルクの温度を間違って熱いミルクを与えてしまったら、母親を操って鍋の中に手を突っ込ませたり、東洋のからくり箱をいとも簡単に解く高い知性と、一人が覚えると残りの子供達もそれを行えるようになるテレパシーの様な能力を発現させます。やがて小学生くらいに成長すると、その子供たちだけで行動して他人の心を読んで意のままに操る様になります。子供達の端正だけど無機質な表情や、抑揚が無くて大人びた喋り方が人間だけど得体のしれない存在と感じさせます。タイトルの光る眼もモノクロの映像と相まって静かな不気味さと迫力感じさせます。仲間の少女にトラックを接触させた運転手を操ってトラックを壁に突っ込ませたり、銃で自分の頭吹き飛ばさせたりと村人を操って死亡させますが、積極的に人を殺すんじゃなくて、あくまで自分達に危害加えようとした相手を攻撃する、自分達の生存権を守るための防衛という描き方なんですよね。他の国で生まれた子供達が殺されたことを感じ取って、自分達は生き残るために力を駆使して戦っているんですよね。旧人類と新人類の生存競争とも感じました。
ミッドウィッチ村内と、ロンドンのシーンも会議室内だけで展開しますが、会話の中で他でも同じ子供達が生まれ、母子ともに皆殺しにされたり、核ミサイルで村ごと消滅させられたりといった情報を出してスケールの大きさ感じさせる手法は好きですね。
ゴードンは「最初から悪意のある子供達はいない。善悪を教えればいい」と主張するも、村人だけでなく政府や軍部も子供達に危機感を募らせ、子供達を集めた校舎を村人たちが焼き討ちしに行こうとするシーン等派手なシーンはなくともドンドン緊張感高めてくれます。
クライマックスのゴードンと子供達の戦いで、「レンガの壁」が次第に崩れていく演出はカーペンター版とも同じですが、ジワジワと緊張感感じさせてくれますね。ラストは得体が知れないとはいえ、こちらが攻撃しなければ攻撃してこない相手を敵認定して抹殺しようとする考えに反対してたゴードンもこういう結果になるのか、とやるせなさ感じます。もっと時間をかけられれば友好的な道も見えたのかもしれないのにな。
異星人を全く登場させずに侵略SFを描くことで、こちらで想像できる余白を残しているのも良いですね。
昔の低予算映画で、派手なシーンはないながら常に緊張感を感じさせる秀作でした。カーペンター版は大筋同じだけど、デヴィッドの扱いが変わっていたりとそういう変化を見つけれるのも面白いですね。