オトマイム

PASSIONのオトマイムのレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
5.0
体を包む衣服は選べるけれど魂を包む体は選べない。だからもがいて、肉体で、言葉で、愛で、あるいは形式で、ほかの魂と繋がろうとするのだろうか。好きなひとの心はここにない、私を愛してくれるあのひとを愛せたらどんなに楽だろう。それでも私の魂はまだあなたを求めてさまよっている。

たくさんある、あなたの好きなところ。なんならひとつずつ伝えようか。そしてつまりはぜんぶ好きと、あなたが困ったような顔をする言葉を最後に添えてもいい。

誰かを大切だと思った瞬間から悲しみが始まるって、だれの言葉だったかな。耳あたりのよいうわべだけの言葉を聞きたいわけじゃないけれど本音を聞きだすことを先送りしていた。可能性がすこしでもあるのならまだあなたと繋がっていたい。それでも、やっぱり正しい言葉で話してほしい。魂に届く言葉で。





このひとの映画は何故これほど琴線にぴたぴたと触れてくるのか。なんて濃密で、愛おしいのだろう。言葉と肉体と愛。生きること、ひとを愛すること、わかり合うことの難しさ面倒臭さをギリギリまでつき詰め露呈させる。
カサヴェテス。ゴダール。その他もろもろ。字幕に頼るしかなくてもどかしい作品は膨大にあるけれど、濱口監督が日本人でよかった。みるたびに、そう思う。いくすじも流れた涙の跡をサングラスで隠して映画館を出た。