オトマイムさんの映画レビュー・感想・評価

オトマイム

オトマイム

ヨーロッパの映画、インディペンデント映画、古い映画がとくに好きです。

映画(361)
ドラマ(0)

ニキフォル 知られざる天才画家の肖像(2004年製作の映画)

4.0

ニキフォルは生涯4万枚もの絵を描いた、ポーランドの素朴派の巨匠(1895ー1968)。美術教育はいっさい受けておらず、言語障害を持ち文盲である。1920〜30年代の作品が最も価値があるとされ、生前にも>>続きを読む

沈黙(1962年製作の映画)

4.2

不思議な手ざわりの作品だった。
言葉の通じない異国のホテルにとどまること、それは沈黙そのものに含まれてしまうこと。冷淡でふしだらな妹も、勤勉で潔癖である一方で酒に溺れる病気の姉も、その息詰まる沈黙に穴
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冬の光(1962年製作の映画)

3.8

「神の沈黙」という言葉が直接言及されるのは三部作中唯一(だと思う)。牧師の人格はさんざんに描かれキリスト教ひいては宗教に対する懐疑心があからさまに表現される。
「愛なんて馬鹿げている。神は愛、愛は神…
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鏡の中にある如く(1961年製作の映画)

4.4

観るものの言葉を封じ込めてしまうような力強さ、凛とした美しさをたたえている。それは夏の孤島という舞台、登場人物の少なさによるシンプルな映像、また彼らの関係性から生まれる不安や緊張感、精神の病を抱えるカ>>続きを読む

何がジェーンに起ったか?(1962年製作の映画)

4.1

ベティ・デイヴィスの怪演は掛け値無しにすばらしい。哀れな痛い女だったジェーンが狂人に変わりゆく姿が凄まじく、海辺のラストシークエンスは圧巻。終わってから口をあんぐり開けていたのに気づいたほど。
本作は
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三人の女(1977年製作の映画)

4.0

見たくもないものを延々と見せられているのに最初から最後まで画面に釘付けになるほどおもしろいから始末に負えない。序盤から不穏な音楽が流れてはいるんだけどシシーがコーラをストローでブクブクやるところでまず>>続きを読む

悪魔(1972年製作の映画)

4.3

初っ端からのトランス状態、正気の人間がほぼ皆無のクレイジーさは2作目にしてズラウスキー節全開。初めてシルバーグローブを観た時は面食らったけれど、ここまで強烈な個性を一貫してぶちまけられると愛おしさと尊>>続きを読む

残菊物語(1939年製作の映画)

4.6

粋とか奥ゆかしさといったものが一貫して感じられ、自然と背筋が伸びる。
例えば本作は稀有な"うちわ"映画だと思うのだけれど、自分以外のものを仰ぐ所作の美しさにみとれます。ふたり歩く夜道、艶やかな長まわし
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スクラップ・ヘブン(2005年製作の映画)

4.5

ものすごくとんがっていて熱量がいっぱいあって振り切れてる、こういう映画は大好きだ!オダギリジョーと栗山千明ちゃん目当てで観たんだけど加瀬亮もとてもよかった。
オダジョーは演技になにかバネみたいなものを
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緋色の街/スカーレット・ストリート(1945年製作の映画)

4.0

傑作と誉れ高いのも納得のおもしろさだった。
人生の歯車が狂い出すのはあんがい些細な瞬間だったりする。真面目だけが取り柄の勤め人が、美女に見栄を張ってついた嘘がきっかけであれよあれよと転落していく。人生
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山椒大夫(1954年製作の映画)

3.8

フェリーニ『道』にどことなく似てるなぁと思って観ていたらどちらも1954年作だった。白く輝くススキ野原の描写は『大地のうた』(1955)と甲乙つけがたい美しさ。この頃は世界中で美しいモノクロ作品が作ら>>続きを読む

雨月物語(1953年製作の映画)

3.7

みずうみを小舟で渡るシーンが神秘的。まるで黄泉の国に流れていくかのような深閑が美しく、時空のゆがみに入りこんでしまったかのようだった。この場面に象徴されるように、強欲や堕落の生々しさを扱いながら全体的>>続きを読む

オルフェ(1949年製作の映画)

3.7

フィルムの逆再生やスローモーションによるマジカルワールドにワクワク。鏡を通り抜けるシーンも『詩人の血』でのプールにざっばーんから進化して(19年経ってますから)、たいへん滑らかな移動になっていた 笑>>続きを読む

美女と野獣(1946年製作の映画)

4.2

じわじわと幸せな気持ちになった。美しいものをたっぷり浴びた幸福。ディズニーアニメも実写版もよかったけれど私はこれがいちばん好き。(別物として扱うのが正しいのかもしれないけど)。

燭台を持つにょっきり
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鬼火(1963年製作の映画)

4.2

暗い坂道をそっとすべり落ちていくような深い虚無感に襲われる。死へのベクトルに自分も徐々に同調していく気がした。

主演のモーリス・ロネは『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンの友人役であり『死刑台のエレベ
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突然炎のごとく(1961年製作の映画)

4.5

ジャンヌ・モローは歳を重ねてからも美しかったけれどこの頃のしなやかさ愛らしさは別格。5年前の『死刑台のエレベーター』の時よりも若くフレッシュに見える。自由奔放で純粋すぎるが故に破滅に向かってしまう、そ>>続きを読む

メトロポリス(1926年製作の映画)

4.0

ドロイド・マリアを製作するシーンから予想を超える幻想的なスペクタクル映像のオンパレード。もっと安っぽいのかと思っていたけど全然!この時代に一体どうやって撮ったんだろう。
誠実な人間のマリア⇆腹黒いドロ
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詩人の血(1930年製作の映画)

3.5

自分の変態性を作品に昇華させることができる芸術家は幸せなのだろうな。フェティシズムに満ちた内面世界を映像表現しましたというコクトーの夢日記なのかも。
浮遊する唇、天井に貼り付いて笑う少女、まさかのダル
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恐るべき子供たち(1950年製作の映画)

4.3

プリミティブで無秩序な世界が描かれたコクトーの原作が、その独特の質感が損なわれることなく映像化されていることに感動を覚えた。彼が口もお金も出した賜物なのだとしても。
窒息しそうなほど親密で険悪な匂いに
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メーヌ・オセアン(1985年製作の映画)

4.7

楽しい〜!私もそこにいたいな、人生って面白いなと思える映画。ブラジル音楽のサントラもすごくいい。手作り感満載のダンス会とラストの船の乗り継ぎ、このふたつのシークエンスは神がかり的に面白かった。映画館の>>続きを読む

オルエットの方へ(1970年製作の映画)

4.5

笑い転げて食べて海で遊んで。夏の終わりの寂しさ・倦怠感ももれなくセットでどうぞ。

箸が転んでもおかしい年頃の女の子たちは、
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仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)

4.8

例えば喉を痛めて声が出ない時。言葉を手放して周りの会話を聞いていると不思議な感覚に陥ることがある。自分と周囲とのあいだに時間のずれができ傍観者になったような、空間認識能力が変化し2次元の世界に身を置い>>続きを読む

夜の第三部分(1972年製作の映画)

4.4

"第四の天使がラッパを吹くと、太陽の三分の一と月の三分の一と星の三分の一が壊されて、昼はその三分の一が明かりを失い、夜も闇を暗くした。"

ヨハネの黙示録の朗読から始まる。タイトルはこの三分の一の闇と
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アカルイミライ(2002年製作の映画)

4.5

クラゲ、つめたくて透きとおって光を放ちながら流れている、ひたすらに漂う、ゆらゆらと、なにも考えずに。だけどね毒があることを誰にでも教えてあげるわけじゃないんだ、あいつは気に入らない、だから教えてやらな>>続きを読む

テナント/恐怖を借りた男(1976年製作の映画)

3.6

ポランスキーは女優の趣味がたいへんよろしい。イザベル・アジャーニは登場した時ちょっとブサイクっぽかったけど(失礼)、泣き崩れてマスカラが流れ鼻が真っ赤になっても色香が漂っていた。
映画館でブルースリー
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袋小路(1965年製作の映画)

3.8

満潮時に孤島となってしまう陸繋島の古城、という舞台設定がおもしろい。潮の満ち引きが話の展開を牽引する。ポランスキーの初期作品はシンプルながら粒揃いですね。

打ちすてられたような寂寞とした砂浜と古城(
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反撥(1964年製作の映画)

4.2

どうしてポランスキーはいつも美女を痛めつけるの〜〜鬼。サディスト。
カトリーヌ・ドヌーブの精神が崩壊していく様子が凄まじい。彼女は実はこういう役でこそ真価を発揮するのでは。落ち着かない口もと、紙のよう
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トラスト・ミー(1990年製作の映画)

4.8

たまにあることだけど観たあと早く帰って寝てしまいたいと思った。そういう作品はたいてい何日も感想がまとまらない。きっと私は語りたくないのかもしれない。言葉はほんのすこしでいいからきれいな箱にいれて時々取>>続きを読む

ネッド・ライフル(2014年製作の映画)

3.9

おかえりなさいハートリー。一周して馴染みのある世界に戻りこれまでの回収も一応できてじんわり。一作目では幼稚園児くらいだったネッドが18歳になり、そこそこ長丁場のクロニクルとなった。登場人物がほぼ全員集>>続きを読む

フェイ・グリム(2006年製作の映画)

3.7

びっくりした。まさかのスパイもの、社会派ブラックコメディ。奇想天外で馬鹿馬鹿しいけどきちんとアイロンをかけたシャツみたいな清潔なハートリー・ワールドは健在。
パーカー・ポージーは前作ではあまり注目して
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ヘンリー・フール(1997年製作の映画)

4.0

いつもとすこし違う世界に一瞬戸惑った。貧困地域のコミュニティ。ずっと苦虫を噛み潰したような顔をしているサイモン、鬱病、性欲過多、弱者への暴力、虐待、DVなどなど問題続出。サイモンは詩を書き始める。掃き>>続きを読む

白夜(1957年製作の映画)

3.7

湧き立つような恋の高揚感と痛みが繊細に描かれた原作。清らかな男女が出会い魂まで白夜に包まれたかのような至福の4日間を過ごす。一方こちらはモテモテのやさ男というマストロヤンニのイメージが強すぎてすこし違>>続きを読む

地下水道(1956年製作の映画)

4.5

抵抗三部作中、最も残酷で壮絶な作品。その緊迫した映像を食い入るようにみてしまう。中隊が列をなして歩いてくる冒頭の長回しからすごい。
大戦末期のワルシャワ蜂起。ドイツ軍に包囲された隊員たちはマンホールの
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世代(1954年製作の映画)

3.8

悲劇的なのにどこか軽やかでみずみずしさがある。
ナチスドイツ支配下のワルシャワで地下活動に身を投じた若者たちの青春譚。彼らの悲劇性も、迫害されるユダヤ人の苦難も、ゲットー蜂起に向かって加速し集結してい
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H story(2001年製作の映画)

2.9

失敗の経過をたどる失敗作のドキュメンタリーという複層構造は面白いと思うけれど、闇に葬るべきものが間違えて世に送り出されてしまったようないたたまれなさを感じる。
アラン・レネ『ヒロシマモナムール』のリメ
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M/OTHER(1999年製作の映画)

4.0

室内で顔が暗く潰れ、寄りも引きもしない長回しのカメラの中でぼそぼそとした会話がやりとりされる冒頭。学生の自主映画みたい、これを2時間半も見せられるのかと思うと初っ端からくらくらした。
しかし不思議なこ
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