景

スタンド・バイ・ミーの景のネタバレレビュー・内容・結末

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ジュブナイルムービーはあんまり見ないのだけど、これは歌が好きだったので見た。森に囲まれた線路を伝い歩いていくというロケーションの素晴らしさ、そんな中で打ち明けられる少年ならではの悩み、冒険の後の切ない別れなども含めて想像通りの作品だったけど、ほんの少しだけ想像以上に刺さるものもあった。いい映画でした。

驚いたのが、少年たちの周りの人間が揃いも揃ってクズばっかなんだよなマジで。それは彼らの家族もそうで、優秀な兄が死んだ後も両親が兄に囚われたままで家庭での居所がないゴーディ、聡明だけど家庭環境が劣悪で全てを諦めているクリス、ノルマンディー上陸作戦で活躍したという父親に虐待されても父親を愛しているテディと、バーン以外の三人は問題を抱えている。四人とも悪ガキなんだけど、それ以上にクソみたいな大人が多すぎる。盗んだ給食代を先生に返したら先生がそのまま着服したというクリスの話は、リヴァー・フェニックスの渾身の演技もあって胸が塞がれたような気持ちになってしまった。

一方で子供らしく馬鹿馬鹿しいことで夢中になるシーンもあって、ゴーディの話したパイ食い競争のエピソードなんかはすんごい下品なんだけど、わざわざそこを気合い入れて撮ってるの笑う。なんでさ。いや笑えたからいいけども。シーンそのものは全く笑えずむしろドン引きしたけど、「なんでここに力入れてんの?」って意味では笑った。ブルーベリーは大好きなので顔を顰めたくなったけど、明日には都合良く忘れてトーストに乗っけて美味しくいただいてると思います。アホで良かった! ただ、虫が苦手なのでヒルが全身に張り付くシーンはちょっと「うわあ」ってなったな。

終盤で印象に残っているのはやっぱり死体を発見するところで、好奇心と意地だけで遥々ハーロウ・ロードまでやって来て、それでも死体を見た瞬間に子供たちが一瞬にして飲まれてしまうのがいい。本能で察してしまえるのも子供ならではだろうなと。正直、映画として見ると劇的なシーンは特にないんだけど、少年たちにとって「汽車に追われて線路を必死に走った」「沼に落ちた」「ヒルに張り付かれた」「死体を見た」「エースたちに立ち向かった」という、いずれの要素も大きなものだということは理解出来る。

だからこそ別れが一番ぐっと来たし、ひと夏の冒険を共にしたテディやバーンとは疎遠になっていくのもリアルで胸が詰まる。中学生になると変わっちゃうの、海外でもそうなのか。あれなんなんだろな本当に。その後に頑張って希望通りに街を出たクリスが不幸な事故で死んでしまったのは遣る瀬無いけど、父親になったゴーディが子供たちと遊びに行くところで〆るのは良かった。ここでようやく流れる名曲も沁みる。
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