まぴお

BIUTIFUL ビューティフルのまぴおのレビュー・感想・評価

BIUTIFUL ビューティフル(2010年製作の映画)
3.3
【それは父が生きた証】

beautiful[bjúːtəfəl]
【形】
1.美しい
2.素晴らしい、見事な、すてきな

娘「ねえお父さん。ビューティフルの英語の綴りを教えて?」
父「発音通りさ。BIUTIFULだよ」

教養のない親が子に正しい知識を与えることはできない。

アカデミー主演男優賞ノミネート。
外国映画賞ノミネート。

「バベル」「21g」と群像劇があり今作は独りの男をテーマにした物語。
この監督はその空気感に触れるだけでイニャリトゥだってわかるくらい独特。
深く深く切々と崩れてくキャラクターのリアルを刻々と描き出す。
ただしこの監督特有の様々なテーマが重層的に関わりあう部分はなにひとつ変わっていない。
それは多数の人間を同時的に見るか独りの人間を多重的に見るかの違いでしかない。

霊と交信する特殊能力をもち余命2ヶ月の末期癌を宣告されたウスバル。
二人の子供を残せるものはなにか。またこの世に残る者に何が残せるか。

しかし彼のその想いとは裏腹にやることなすことうまくいかない。
ウスバルのやることは全て裏目に裏目にでてしまう。

その負の連鎖はウスバルが死と挨拶を交わすまでねっとりと彼にまとわりつく。
そしてその負の連鎖はメビウスの輪のようにオープニングとエンディングで繋がる。

表面的に意味を見出すことが困難なその物語はウイスキーにいれた氷がチリチリと溶けるように徐々にその構造をあぶり出してくる。

一見なんの変化もないその繋がりは140分を刻み終えた時、溶けた氷のようにカランと音を立てて一変する。その真実を知り得た時シックスセンスとはまた違った深く悲しい切なさに覆われることだろう。

これから親になる人、子を持つ親になる人は子に何を残せるのか?と考えるきっかけになると思う。

411本
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