このレビューはネタバレを含みます
バルセロナで移民の手配師をしながら2人の子供を育てる主人公ウスバル。懐が深すぎるが故に身勝手な妻に振り回される苦労人で、ただでさえ悲惨な状況なのにそこからさらに追い打ちをかけるように病気で余命宣告を受ける。で、もうさすがにこれ以上はないでしょと油断していたらいきなり想像を絶する悲劇が•••。ちょっとこれは、つらすぎてしんどい。
<ここからはエンディングに触れてネタバレします。>
でもただ悲しいだけの話ではなかった。
死をテーマにした作品ではあるけど、この映画が描いた死は悲しいというよりはタイトル通りビューティフル、静かで穏やかで美しいものだったと思う。
詰まるところは"死による救済"っていうフランダースの犬タイプのお話だったんだけど、この作品の独自性はその死の描き方にあるのかなと思う。
ウスバルには死者と対話するイタコのような霊能力があり、この映画にはちょくちょく幽霊がでてくる。でもリアリズムと地続きのトーンで超自然を描くマジックリアリズムの作品なので、ホラーやファンタジーのような怖さ、不思議さの演出はない。幽霊たちは当たり前のような顔をしてひょこっと現れる。
それからウスバルの死のシーン。まだ生きて会話しているウスバルと、死んで幽霊になったウスバルが同じ空間に並んでいる。
これはおそらく時間の経過を視覚的に見せるキュビスム的な手法で、生と死を一つの画面上に並べているものと思われる。
この監督の作品はとにかく難解だしこれは手探りの推測に過ぎないけど、生と死の距離が近いというよりちょっとオーバーラップしている、そういうマジックリアリズムの世界なのかなーと受け取りました🧐