Tai

エレファント・マンのTaiのレビュー・感想・評価

エレファント・マン(1980年製作の映画)
4.3
一体、誰が彼をそうしてしまったのか。

気になってはいたけど観ていなかった本作。フォロワーのRockoさん絶賛レビュー観ての鑑賞です( ´∀`)b
残念ながら劇場は都合がつかなかったので、おうちDVDです。

19世紀後半に実在した「エレファント・マン」と呼ばれたジョゼフ・メリックを題材にした物語。
今で言う遺伝子疾患により頭部を始め身体の至る所が肥大化・変形しているため、そう呼ばれたそうです。
本作では見世物小屋で生きてきたジョン・フレデリックが医師のフレデリックと出会うことで、その人生に転機が訪れ…

1番驚いたのは、これ1980年製作なんですね!
本編はモノクロで、古い街並みやら、そこに暮らす住人たちやら、作品全体から漂う空気が40〜50年代の作品を観ているようでした。そこに監督の映画愛を感じましたね!
常に新しい作品を開拓していく監督も素晴らしいですが、古き良き作品を新たに表現してくれる監督も素晴らしいですよね(*´꒳`*)

その容姿から酷い扱いを受けてきたジョン。
こうした人物の扱いを見ると〝道徳〟という概念は人類史としてはまだまだ歴史が浅いのだなと感じました。
今ではインターネットの普及で世界中の人々が知識の共有をしやすくなっていますが、遡れば遡る程にそれは難しい環境。
そんな中でジョンのような得体の知れない存在というのは、下手をすれば本当に自分同じ〝人〟として認識されていなかったのかも知れないなんて考えてしまいました。人の概念がまだまだ狭義だったのかなと。
一体、なぜ差別が無くならないのか等の問題に対してアプローチできる作品ではないでしょうか。

また本作では彼の扱いというのが本当に人それぞれで、まさにジョンの目を通して社会を観ることができました。
良くも悪くも様々な扱いを受けたジョン。
しかし、どれが本当に彼の為になっていたのかを考えると首を傾げてしまうばかりでしたね。
「魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」の言葉を後半は特に考えて観てました。
一体、彼には何の治療が必要だったのか?
簡単に「差別はいけない」「優しくしよう」「手を差し伸べよう」と言っても、何をどこまでしなければならないのか。
こうした面でも、やはり差別などに対して考えると同時に、他人に出来ることへの強烈な問題提起を感じました。
すごい作品でしたね。


ただ……やっぱ観ていて非常に辛かった(;´Д`A
それがこの作品には必須だと理解できていてもラストまで辛すぎて涙も出ませんでした。
婦長さんだけが癒しでしたね◎
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