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パンズ・ラビリンスのkanacoのレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
3.8
内戦後のスペインの過酷な「現実」と妖精たちが導くおとぎ話的な「幻想」が融合されて世界観を構築し、主人公の少女オフェリアにとって、どちらが真実の世界であるか考察させるような余地を残す、ギレルモ・デル・トロの個性が光ったダークファンタジー。異形の妖精たちの造形が凄くカッコイイ!(137文字)


****以下致命的なネタバレあり&乱雑文****





原題: El laberinto del fauno, 英題: Pan's Labyrinth

内戦後のスペインの過酷な「現実」と妖精たちが導くおとぎ話的な「幻想」が融合されて世界観を構築しており、主人公の少女オフェリアにとって、どちらが真実の世界であるか考察させるような余地を残す、ギレルモ・デル・トロの個性が光ったダークファンタジー。

何といっても異形の妖精たちの造形が凄くイイ。特にお気に入りなのは「パン」と「ペイルマン」。どう見ても悪魔にしか見えないし、言動もあまりに怪しい「羊の角の妖精パン」は隠せない邪悪さが滲み出ていてカッコイイし、生々しい造形で見た目も特性も恐ろしすぎる「ペイルマン」は一度見たら忘れない。まぁ、一番気持ちが悪かったのは、第一の試練で出てくる木の中の虫とカエルだけど…😫

結末が、「人間の娘/バッドエンド」か「妖精の国の姫君/ハッピーエンド」か、は意見が分かれるところだと思うけど、私的には「人間の娘/バッドエンド」かなぁ。あまりにも辛い現実から逃げ出したい少女の夢であったと思う。

なお、妖精の国の姫君が真実であったとして、そちらの住人も割と信用し難く感じる。異形の者たちが住む世界も、美しさ中におぞましさを感じたし、理不尽というか胡散臭さが凄かったから、逃れて辿りついた妖精エンドさえハッピーエンドなのか、なかなか不安が残るところ。オフィリアの希望と絶望が作り出した造形があの異形の者たちの様相だとしたら納得だけれど、実在する個体ならばなかなかパンたちを完全には信じがたい。

そもそも、試練は生身で挑んでいるから、人間として肉体が物理的に死んで、魂だけ姫君として復活するというのがあまりしっくりこない。だから、妖精も、地下帝国も本当に存在したし、試練も本当だったし失敗していて、ラストのみ死ぬ直前に人間として死んだ少女が見た「姫君が本当の自分だったという夢」だったか…とか最後は思ったけれど…。

などなど、考察が楽しい作品ですかねぇ😊もう一回みたら考察変わりそう🙄

いずれにせよ、少女に対して優しくない残酷な童話だったと思う。そして、厳密に言えば戦争に侵され負の連鎖を生み続け、加害と被害を繰り返し続ける大人たちも悲劇的であり、全方位に辛いお話。パッケージの児童書間に惑わされず、元気が良い時に見たい大人ファンタジーな1本。
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