ノラ

ブロークン・アローのノラのレビュー・感想・評価

ブロークン・アロー(1996年製作の映画)
3.8
本作は、1996年に公開されたジョン・ウー監督によるアクション映画となります。あらすじは、ヘイル大尉とディーキンス大佐のふたりが核兵器を搭載したステルス爆撃機に乗って訓練飛行を頑張ってたら、ディーキンス大佐が突然裏切って核兵器を持ち逃げしちゃったので、仕方なくヘイル大尉が核兵器を奪還するためにディーキンス大佐を頑張って追いかけるという内容になります。

とにかく今作はジョン・ウー監督ということで爆発シーンがかなり多いです。冒頭に登場するステルス爆撃機が早々に墜落爆発したかと思えば、大型車両や列車も派手に爆発を繰り広げて、挙句の果てには核爆弾すらも大爆発することになります。そしてヘリコプターに至っては劇中で計4機も爆発するなど、ヘリに何か特別な恨みでもあるのかと思いたくなるほどに次々と爆発するので、終始爆風にまみれた有り様となっています。

そして今作の主人公となるヘイル大尉はクリスチャン・スレーターが演じていて、なんだか特徴がないのが特徴といった人物で、とにかく特徴がないおかげで彼のアクションに集中することが出来ます。核奪還のために対峙するディーキンス大佐とは元同僚の関係ながらも、ボクシング対決では何度も彼に敗北を喫しているなど劣等感を抱いていることから、軍人としての責務はもとより個人的な執念もあってディーキンスをとことん追い詰めることになります。

一方のディーキンス大佐を演じているのがジョン・トラボルタなのですが、こちらはサングラスを掛けたり外したりの仕草を何度も繰り返したりと妙に気取った演技で、隙あらばカッコつけてくるのがちょっと鼻につくのですが、一方で、何度も食らいついてくるヘイルの執念に触発されたのか、最後は拳による勝負で彼と決着をつけようとするなど、最後には戦士としての矜持を見せてくれるのが良かったです。

ディーキンスはとにかく狂気とも思える行動を繰り広げていて、中盤での鉱山戦や後半での列車戦では、核兵器爆発のタイムリミットを得意げにポチポチ作動させてくるなど、物語の緊張感を高める方向に大いに暴走します。最後のシーンでも、自身の腹部に飛び込んでくる核弾頭を不敵な笑みで受け止めるなど、最後まで笑顔を絶やさない人でした。

そして今作では、ヘイルの協力者として、女性パークレンジャーのテリーが登場するのですが、彼女もヘイルと同じくらいの行動力を持っていながらも、劇中で語られる彼女の背景は「家族は犬だけ」というやや乏しいもので、もっとその行動力の源泉となる背景を掘り下げて欲しかったところですが、とにかくヘイルとは恋仲というよりは戦友といった間柄で、程よい距離感で主人公を援護してくれる頼もしいパートナーとなっています。

 また、物語の中盤ではヘイルが戦線を一時離脱して軍施設に戻ることになるのですが、一方でテリーだけは引き続きひとりで追跡を続けるという展開もなかなか良かったです。彼女がひとり追跡を続けてくれるおかげで、クライマックスの列車戦に向けて物語の緊張感がそのまま維持されるし、なによりも彼女がただ主人公の後を付いていくだけのヒロインではなく、彼女もヘイルやディーキンスに負けず劣らずの度胸を持った人間だということが強調されることにもなるので、なかなか巧みな展開運びだと思います。

とにかく今作は「爆発する映画」の一言で片付けてしまいそうな映画ではあるのですが、序盤には砂漠地帯でのカーチェイスがあり、中盤には薄暗い鉱山内での激しい銃撃戦、後半では列車内での肉弾戦を交えた激闘が繰り広げられるなど、数多くの見せ場があって純粋に楽しめた映画でした。
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