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第十一号監房の暴動のzhenli13のレビュー・感想・評価

第十一号監房の暴動(1954年製作の映画)
4.3
すげえ…ドン・シーゲルって社会派だったんだな。囚人たちが暴動を起こすんだけど、脱獄するわけじゃない。精神障害を伴う重犯罪の累犯でほとんどの者が社会に戻ってもやっていけない。刑務所の改修や職業訓練など至極真っ当な要求で、刑務所長の州への要求と合致する。しかし仮釈放をめざしてて囚人の中で暴動に反対する者もいる。囚人同士という集団を自分たちでどう統制できるのか、また刑務所の人手不足というシステムの問題による看守のモチベーションや技量の不十分さによって刑務所自体の統制がとれなくなり機能不全になるさまを俯瞰でまざまざと見せる。わわわーっと水が溢れ出して洪水になっていくように。監房間での協働というか、食堂の食糧か煙草かの包みを大量に奪ってフェンスごしに隣の監房へポンポン投げ込んでいくのが印象深い。
組織を統制できないさま、崩れていくさまを見せつけ、マスコミを巻き込んで真っ当な要求をしアンチヒーローとなる囚人たち。しかし囚人たちも刑務所長も、結局は集団に与するものとして権力に屈服させられカタルシスは用意されない。

冒頭のシンメトリックな一点透視の第十一号監房の構図をラストに反復する。ここで最初に囚人らが看守を捉え、独房の鍵を次々開けていくシーンからずーっと緊張感が持続する。
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