Omizu

遠い声、静かな暮しのOmizuのレビュー・感想・評価

遠い声、静かな暮し(1988年製作の映画)
3.8
【第41回ロカルノ映画祭 金豹賞】
テレンス・デイヴィス監督作品。カンヌ映画祭監督週間に出品され国際映画批評家連盟賞を受賞、ヨーロッパ映画賞では作品賞をはじめ最多の5部門で候補にあがった。

1940~50年代イギリス・リヴァプールを舞台にアイリッシュ系一家の一代記を「遠い声」「静かな暮らし」の二部構成で描いた作品。全編にわたって30曲もの歌が演者たちによって歌われる。

80分程度の短い尺でスッキリとした語り口で語られるホームコメディといった感じだろうか。ウディ・アレンの『ラジオ・デイズ』なんかと似ているなと思った。ただそれよりはイギリスらしく淡々としているかな。そんなにコメディに振り切った感じではない。

横暴な父の思い出を長女の結婚式から回想する前半、三人の子どもたちがそれぞれ結婚し家庭を持つ後半から成る。

前半は特に時系列をシャッフルさせて語っていくが、混乱せずスッキリと描いていくのが気持ちいい。

後半は家族内のいざこざや女友達との明るい関係をライトに描く。暗い過去はありつつもそれはそれとして前向きに生きていく家族の絆を的確に描いている。

転換、編集のスピード感に違和感は覚えたものの、深刻にならずに素直にいい映画だなと思える秀作だと思う。小気味のいいテンポが持ち味かな。DVD化されていない作品なのでこの機会に観られてよかった。
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