垂直落下式サミング

野性の証明の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

野性の証明(1978年製作の映画)
3.5
母の友人は、クライマックスで高倉健を追い詰める大勢の自衛隊員のひとりとしてエキストラ参加していながら、観賞後「つまんない」と断じたという、私のなかでは曰く付きの映画。
東北の寒村で大量虐殺事件が起こる。その生き残りの少女と、偶然虐殺現場に遭遇した自衛隊員を主人公にして、巨大な陰謀を描く。
面白かったのは音楽演出。この映画の音楽監督の大野雄二は、翌年の宮崎駿監督の『カリオストロの城』にも参加し、楽曲を提供している人だ。アクションに被さる効果音や、感傷シーンのセンチメンタルな旋律など、曲調もその使い方もよく似ている。
たしかに、不器用な健さんと圧倒的に器用なルパンはまったく違う主人公だが、少女の前ではうまく自分を表現できないロリコンな童貞性はかなり重なる部分がある。カリオストロ伯爵の人物像は、本作の三国連太郎の芝居によく似ており、そうやってみてみると、薬師丸ひろ子はクラリス姫、中野良子は不二子、夏八木勲が銭形と置き換えることができる。
アニメーション映画は、実写よりも前からストーリーの骨格は出来上がっていると思うので偶然の一致だろうし、カリオストロが世代を越えた名作なのに対して、こちらは昭和キッチュ映画としての楽しみ方しかできないが、とにかく画面に金がかかっているので、今はなき角川大作主義に思いを馳せることができる。
夏八木勲は、この時期は「八」を参勤交代させているが、磯野貴理子が、気分で「子」付けたり外したりしていたのとはワケが違うので、舐めないでいだきたい!