ワシ

空中庭園のワシのネタバレレビュー・内容・結末

空中庭園(2005年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

かなり昔から、なんとなく気になってた作品。
初見だと思ってたけど、途中というか、既に終盤になって、むかし観てたことを思い出した。
でも物語は完全に忘れてたから無問題。
原作は未読。

郊外のマンションに住む京橋家は、互いに隠し事をしないのが家族の決まり。
しかし実際は、家族のそれぞれが何らかの秘密を持っていた。
そのことを知ってか知らずか、一見すると幸せそうな京橋家だったが、秘密は次第に大きくなり、遂に限界に達してしまう…みたいな感じの話。

初っ端から娘が母に、自分が仕込まれた場所の話を訊く。
そんな話題をあけすけに語る家族って引くわー。
こんな家族あり得ない気がするが、そんなこと言ってたら何も始まらないな。

正直、観終わった直後は意味がよくわからなかった。
こじつけだらけになるかも知れないが、自分なりに考えたことを書いてみる。
まずタイトルの意味から考えてみた。

作品タイトルの“空中庭園”って、文字通り空中の庭ってことだよね?
つまりそれは、本当の意味で地に根付いてないから、不安定で危うい存在を意味してるのかなと思った。
フワフワと揺れ動くオープニングも、そういうことを表現してたんじゃないかな。

“空中庭園”を検索すると、本作や実在の施設の他に、バビロンの空中庭園がヒットする。
冒頭シーンの照明に描かれてた絵柄は、この庭園だったんだろう。
ネット情報によると、バビロンの空中庭園に関する言い伝えはあるが、そんな建築物が実在した証拠は今のところ無いそうだ。

そうか、空中庭園は有ったと言われてるが、存在は証明されてないのか…。
だったら空中庭園って「有ると思えば有るし、無いと思えば無いもの」という解釈も出来そうじゃね?
そう解釈すると、先述した不安定で危うい存在と近しいものに思えてくる。

本作は家族の物語だ。
タイトルの空中庭園は、家族のメタファーだと考えてみよう。
特別な事情がない限り、誰もが家族に属してるし、家族というものの存在を認知してる。
でも、家族って何なんだろね?
それが有ると思えば、存在してるような気がするけど、目には見えないし契約した訳でもない。
家族なんて無くね?と疑い始めると、途端にその存在は不確かに思えてこない?
人々は何故、そんな曖昧な家族という名のもとに集まり、一緒に暮らしてるんだろうね?
そうした、家族というものに対する疑問や不確かさが、バビロンの空中庭園のイメージに重ねられてる…のかな?

そしてこの作品は、主人公・絵里子の嘘と思い込みの物語でもある。
作中で絵里子は、こんな言葉を口にする。
「バレない嘘は嘘じゃないのよ…」
確かに嘘はバレない限り、本当のこととしてまかり通ってしまう。
しかし嘘は嘘でしかないし、空虚な実態には不確かさや危うさが伴う。

彼女の家族は、彼女が計画的に作り上げたもの。
嘘に基づく家族だからこそ、彼女は家族の中で嘘(隠し事)を禁じたんだろうねぇ。
ヘンな家族だと思うが、そこまでするに至った絵里子の生い立ちを思うと、ちょっと切なくなる。

自分自身に対する嘘や、家族に対する嘘。
それらの嘘を本当の本物だと思い込むことで、絵里子は今の生活が幸せだと思えてたんだろう。
なにしろ彼女の理屈ではバレなければ嘘じゃないのだから、頑なに信じてさえいれば何もかも本当ってことになる。
しかしそれらは、あるキッカケでブッ壊れてしまう。

突然の母からの電話で、自らの矛盾に気付かされる絵里子。
そこへ、以前息子がボソッと呟いた言葉が追い討ちをかける。
「思い込んでると、本当のものが見えない…」

血の雨のシーンは圧巻だが、ワシは全く意味がわからなかった。
でも後でよくよく考えてみたら、あれは生まれ変わりを表してたのかな?
まだピンときてないけど、とにかく絵里子はそれまでの思い込みが解けて、強烈な衝撃に襲われたんだろう。

一度は壊れた家族が、またここから始まる。
秘密を持たないなんてルールが無くても、気持ちや思いは通じ合う。
希望を感じる結末は好印象だった。

絵里子の母の「本当に大事なことは、お墓の仲間で持ってくもんだよ」って言葉は、とっても意味深で印象的。
でもね、その言葉に何かを感じるんだけど、それを言葉で表すほどの理解は出来てないんだよなぁ〜。
赤いチューリップで始まり、白いチューリップで終わる対比は、花言葉が関係あるのかな?
まだまだわかんないことが多くて、モヤモヤした気分が残る作品だった。
原作読んだらスッキリしそうだね。

実際に家族って、それぞれの役割を負い、それに合うよう行動してる部分はあると思う。
別に、京橋家だけが学芸会してる訳でもなさそうじゃないかい?
そういう意味では、変わった家族の姿を描いているようで、実はどの家族にも通じる問いかけを持った作品なんだろう。

良くも悪くもその柵から逃れられないし、面倒くさいときもあるけど、とても大切。
そんな家族の本質って何なんだろねぇ…?
ワシにゃわからん。

余談。
小泉今日子の演技も良かったが、妻への愛を語る板尾さんもステキでした!
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