このレビューはネタバレを含みます
アマプラのリスト消化のため視聴。
ずっと前にネット記事で、この作品のことを知った。
興味深い内容なのでリストに入れたけど、長いこと放ったらかしだったなぁ汗
主人公・湯川華が入社した会社は、実はマルチ商法を行うブラック企業だった。
入社前の説明と違う!と訴える華だったが、上司から激しく叱責されたうえ、先輩社員から酷い扱いを受けてしまう。
傷つき、相談相手も無い華は、やがて新興宗教にのめり込んでいく…といった感じのお話。
80年代後半から90年代にかけ、地下鉄サリン事件をはじめ数々の凶悪事件を起こしたオウム真理教。
教団が消滅して数十年が経った今、もし同じようなカルト宗教があったら…?
そんなコンセプトのもと制作された作品。
ワシは、宗教や信仰が登場する作品を苦手にしてる。
もともと宗教や信仰に関心が無いうえに、考えてもよくわからないことが多く、得体の知れないものに思えるからだ。
本作も宗教や信仰を扱ってるが、そういうものにハマる過程や心理に焦点を当てた作品だったので、さほど抵抗は感じなかった。
悪質カルト教団の実態をつまびらかにして、安易な入信に警告を促す内容だが、その見せ方は独特だ。
基本的には、どこにも自分の居場所を見出せなくなった主人公が、宗教にのめり込んでいくドラマが描かれる。
そしてその合間に、本当の元オウム信者たちや、実際に元信者と接してきた僧侶のインタビュー映像が流される。
そんな、かなりルポルタージュ寄りの内容だった。
ドラマ内の状況や人物の心情に合わせて、それらを補足するような内容のインタビューが挿入される。
それにより、なぜカルトに入信してしまうのか?とか、カルトにのめり込んでしまうのはなぜなのか?といった疑問に、実例をもとにした解説が行われる。
そうした見せ方は、単にドラマのリアリティを増すだけでなく、カルト問題についてのケーススタディにもなっている。
しかしそんな手法も、良い点ばかりじゃない。
観ていると、次第にドラマ部分が、インタビューの再現ドラマっぽく思えてくる。
さらに内容が内容だけに、エンタメ性の高い演出が難しく、なんだか教育ビデオを観てるような気分になったりした。
そんな部分は評価が分かれるだろうが、ワシは特に不満はなかった。
ますます信仰にのめり込む主人公。
教団は救済の名の下、活動を活発化させるとともに、その行動が過激化していく。
すると教団の邪魔をする者は“悪”であり、人々を救う我々こそが“正義”だと、認識が変化していく。
自分がしてることは正しいと信じながら、凶悪な犯罪を実行するなんて、言い知れない怖さがあるな。
当時、オウムの中枢に居た上祐史浩氏や、新實智光死刑囚の妻へのインタビューもあって驚かされた。
それを観て、何をどのように感じたか、ここでは書かない。
ぜひ実際に観て、聴いて、感じて頂きたい。
ドラマ的には望ましい結末と言えるが、その後に突きつけられる現実&真実にハッとさせられる。
当初は実録ドラマとして観始めたが、重いドキュメンタリー作品を観た後のような気分になった。
社会や組織に属することや、自分の居場所について、あらためて考えちゃったなぁ〜。
低予算だし、いろいろ微妙な点はあるけど、その割にはなかなかの見応え。
やはり実際の関係者のインタビューを挟む手法は、かなり効いてたと思う。
余談。
ドラマ部分に関しては、津田寛治が、これぞ津田寛治の真骨頂!って感じのクソ上司ぶりで好き。