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リップスティックのtakのレビュー・感想・評価

リップスティック(1976年製作の映画)
3.4
性暴力を扱った映画は数多く製作されている。正面に据えるテーマはそれぞれあるが、センセーショナルな場面が存在するだけに、製作側には話題性につながるものだととらえられがちなのだろう。

ジョディ・フォスターがオスカーを獲得した「告発の行方」は、直接手を下さずとも周囲で煽った人々を教唆の罪に問えるかを争う法廷劇が主たるテーマ。しかし、ピンボール台に押し倒されるシーンの話題ばかりが先行していて、主題が伝わったとの印象は薄い。東陽一監督の「ザ・レイプ」も法廷劇が大きな部分を占めているけれど、描かれるのは事件と公判とで深く傷つくヒロインの姿。女性がいたぶられる映画は、正直観ていて辛い。

それだけに最近、性暴力場面を間接的に描いた作品「プロミシング・ヤング・ウーマン」が出てきたのは注目すべき。酷い目に遭う女性を身体張って演じる場面がなくても、その行為の卑劣さは表現の仕方で十二分に伝えることはできると世に示した作品だった。

さて。レイプ裁判を前面に打ち出した70年代の作品に「リップスティック」がある。事件の被害者は、マーゴ・ヘミングウェイ演じるファッションモデル。妹の音楽教師に自宅で襲われたのだ。苦痛に耐えて裁判に臨むが、実社会でも法廷でもこうした事件をまともに取り扱わない。そんな状況に果敢に戦いを挑む女性検事とヒロイン。検事役はアン・バンクロフトが演じており、他の代表作にも劣らないカッコよさ。しかし法廷の現実は厳しい。そしてヒロインが選択したのは…。

70年代のウーマンリブ運動を経た時期に製作されただけに、社会的な問題を訴えた作品となっている。しかしこの映画を紹介する記事は、ヒロインを演じたマーゴ・ヘミングウェイの衝撃シーンに触れてばかり。伝わるべきところは他にあるはずなのに。実の妹マリエル・ヘミングウェイは本作がデビュー作である。音楽担当はミシェル・ポルナレフ。
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