あ

秋津温泉のあのレビュー・感想・評価

秋津温泉(1962年製作の映画)
4.6
足を陰に隠してまた出す仕草が官能的で、冒頭から非常に印象的でしたが、そこからはむしろロングショットが非常に印象的な映画になっていきました。

汽車に残された河本と青空の沈鬱な感じもよかったですが、終戦後、低い木が茂る山肌での秋晴れが晴れやかで、新子の生命力を代弁しているかのようでした。どこにああいう山があるのか不思議でしたが、日本の山々をあそこまで魅力的に映すロケーションもなかなかないように思いました。

一方で、河本が去っていく時の、旅館から見た道や、プラットホーム、川岸のロングショットも印象的で、これもまさに残された新子の寂寥感や、だんだんと河本に吸い取られていく生命力が目に見えて分かる抜群のロングショットでした。

というわけで、作品自体非常に文学臭くて、河本に関してはここまでタバコの似合わない男はいるのかとまで思いましたが、広々とした山間の秋津温泉の風景がシネスコの旨みを十分に感じさせてくれたため、臭みはそこそこ抑えられていました。

また、17年という歳月をメイクというより表情でこなし切った岡田茉莉子の名演技は必見です。
あ