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ターミネーターのあのレビュー・感想・評価

ターミネーター(1984年製作の映画)
5.0
「細かいことは知らない」で通すことで、よく考えたら破綻している時間軸をそれとなく隠した上で、体感で運命を感じられるようになっていて、だからこそサラとカイルの特別な夜の一点に向かって全てが動いているように感じられる完璧な映画。こんなに納得ができるベッドシーンは他にありません。

そもそも「細かいことは知らない」で通ってしまうのも、”I’ll be back”からの車で戻ってくるようなシンプルかつ瞬間でキメるアクションが全てのシーンで効いていて、ストップモーションを省略するための特撮やまだ英語があまり喋れないシュワちゃんの少ないセリフといった粗すらも作品の無機質な不気味さを引き立てるのに貢献していて、おまけにカースタントの映画であって、女性の映画であって、冷戦の空気を捉えた映画であって、全ての側面でエポックメイキングだからこそでしょう。

そしてなんといってもラストです。戦場で燃え尽きた写真がガソリンスタンドという何気ない場所で再提示されるところから既にハッとさせられますが、子供から受け取った写真=子供を授かった自分の姿、を軽々と受け取り、嵐に向かってアクセルを踏み切ることで全ての運命を受け入れる力強さよ... こんなに印象的なラストもそうそうありません。

へなへなとしたそこらのウェイトレスのお姉ちゃんから、自身の出産によって地球の運命を背負うことを選ぶほど強い人間に成長するというハンパない女性映画を、一見そういうものとは無縁に見える、映画をヒットさせて荒稼ぎしたかと思ったら飽きて海に潜って、海に飽きたらまた陸に上がって映画撮ってヒット飛ばす、貴族みたいな生活をしている偏屈なSFジジイ、ジェームズ・キャメロンが生み出してしまうところ(もちろんこの映画の時はまだ新人ですが...)に、人類の可能性すら感じてしまいます。

シンプルかつ強力な脚本は全てにおいてお手本レベルで、かつ低予算ならではの省略が全て上手くいっていて、本当に何度見ても惚れ惚れしますし、普通に2よりもこちらの方が良い気がします。
あ