ジャン・コクトー作品初鑑賞。18世紀のフランス貴族ヴィルヌーヴ夫人が、1740年に発表した御伽噺『美女と野獣』の元祖映画版。
幻想的でどこか官能的でもある。映像も衣装も芸術的で様々な観点から楽しめる素晴らしい作品。
野獣のベルに対する信頼と愛、そして悲しみに心が締め付けられる。
野獣の持つ、孤独から生まれた悲しさと寂しさが真っ直ぐに伝わってくる。ベルも言っていたように彼は私たちをもとても悲しくさせる。一番有名な映像化作品であるディズニー・アニメーションの『美女と野獣』では最初、野獣から孤独ゆえの怒りが見て取れたけどこの作品では野獣には怒りも傲慢さもなかった。
野獣の完成度に驚いた。あの時代にこんなに技術が高い特殊メイクができる人がいるなんて、どれだけの人が驚き、感謝しただろう。本当にすごい。
壁や机から伸びる腕、ベルや野獣の背後で動く石像も良い。屋敷内に“あるもの”が生きているというよりも“屋敷が”生きているという感じ。
『美女と野獣』は昔から何度も映像化されているけど、その作品ごとに物語が多少違ったり、屋敷や衣装などの美術面にも大きな違いがあるから物語のベースは同じだけどしっかり別の作品として楽しめるのが良い。
同じくフランス映画である『美女と野獣(2014)』は物語だけでなく、衣装なども本作に近い印象。原作は今まで一度も読んだことがないけど、これを機に読んでみたいなと思った。