カネコ

籠の中の乙女のカネコのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.0
ヨルゴス・ランティモス監督作初鑑賞🎥

外の世界は危ないからと妻と子供3人を家から一歩も外へ出さずに外界との接触をさせずに育てている父親。
長男が年頃になり(と言っても兄妹3人ともとっくに成人は過ぎてると思う。)性欲を持て余さないようにと性欲処理用の女性を雇う父親。
外からの女性クリスティーナに興味を持つ長女はクリスティーナと性的な関係に。
クリスティーナからもらった映画のビデオを観てますます外の世界に興味を持ち、自分の環境に疑問を持ち始める長女。
そして父母の結婚記念日に長女は外の世界へ。

冒頭のナショナルPanasonicのレコーダーだったりVHSとロッキー・ジョーズ・フラッシュダンスで時代は80年代設定かな?
家の外がほとんど出てこないので時代も分からず不思議な感覚。外の世界から遮断されるってこういう事なのね。

子供たちは飛行機が頭上を飛んだ後に「庭に落ちた!」とか言って庭に飛行機のおもちゃを転がしておくとそれを争って拾いに行くくらい世間知らず。
子猫も凶悪な生き物と言われて育っているから犬の鳴き真似しながら駆除。

ソフィア・コッポラのsomewhere みたいな色遣いのインテリアとプールがお洒落で、その中で行われているのは規模の小さいパゾリーニ監督のソドムの市。

今作で父親は家族を洗脳して自分だけの理想的な箱庭を作っている。
ソドムの市は第二次世界大戦時にファシストの残党が小さな国を作り、そこに若い男女を誘拐してきて社会と断絶した屋敷の中で支配者が理想郷を作っている。

ソドムの市は虐待と変態行為の限りを尽くすエログロ作品だけど撮影当時のイタリア社会の風刺が盛り込まれているので今作もギリシャ社会の風刺なのかな。
世界史に明るくないのでそこまで深掘り出来ないけどギリシャの情勢に詳しかったらもっと楽しめたと思う。

「数か月後ママは双子と犬を1匹産む」
は?え犬??
「もし生活態度が良くなれば出産は回避できるかもしれない」
はぁ?!
どう見ても母は子供産めそうな年齢じゃない。犬は調教が終了するから連れてくるとして子供は父親がどこかから調達してくるんだろうか。それこそ犬を飼う感覚で。
そういった所もソドムの市だなあと思った。

クソデカベージュモザイクと全裸でも靴下脱がないセックスシーンから始まりどんな気持ちになったら良いのか困る作品。

結婚記念日での奇妙なダンスからのフラッシュダンス完コピは笑った。
長女はロッキーの物真似といい芸達者だった。
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