このレビューはネタバレを含みます
好みではないのだけれど、おもしろい…
抜けるはずのない犬歯が抜けることを待つ恐らく30歳に近い大人たち。
地獄が地獄と分からぬうちはそこも天国なのかもしれない。
鑑賞後は『悪い子バビー』を思い出していた。バビーも外の世界に出た直後出会う人々のモノマネをしていたが、長女もビデオで観た作品のモノマネをしている。それも長々と台詞を覚えて声音も真似る。
そうすることで世界と自分の感覚をつかんでいけるのかもしれない。
全く抜けなさそうな犬歯を自ら殴り抜くシーン、そんなことをしなくても外には出られるのにと画面の向こうで悶え、父親の刷り込み教育の理不尽さに怒りがわいた。
新作でも感じたけれど、ランティモス作品は操る者と操られる者の構図が頻繁に登場する気がする。
でもsweet dreamsの歌詞のように、そうされたいからそうしてる人もいる、かもしれない。
そこにある関係は境界線でピッと区切れるわけではなさそうな…
でも今作は完全に理不尽、ピッと区切る。
あの車のトランクから外に出たらバビー状態が恐らくは始まるわけだけど、もしも開けられなかったら…やっぱり境界線は曖昧に。