たく

光の旅人 K-PAXのたくのレビュー・感想・評価

光の旅人 K-PAX(2001年製作の映画)
4.0
今まで観てなかったのが勿体無いくらい良かった!ヒューマンドラマとしてもミステリーとしても素晴らしく、プロートが最後の最後まで本当のことを言ってるのかただの妄想に囚われてるだけなのか分からないという筋書きに完全に引き込まれた。今やすっかり鳴りを潜めた感じのケビン・スペイシーだけど、やっぱり良いものは良いね。

ある日、駅のガラスから差し込む光と共に突然現れた感じの男が、自分が遥か彼方の惑星K-PAXからやってきたと語って精神病院に送り込まれる。彼の担当医となったパウエル博士がカウンセリングしていく中、プロートと名乗るその男の話にどうも信憑性があるらしいということで、果たして彼の言うことが本当なのか、ただの狂人なのかというサスペンス要素が何ともスリリング。

途中からプロートが何かトラウマに囚われてるんじゃないかとパウエル博士が気付くところから、思わぬミステリーになって行くのが手に汗握る展開。催眠療法のくだりはちょっと出来過ぎに感じたけど、彼の過去が明らかになるあたりは悲しいながらも見事なストーリー運び。ラスト、果たして彼は本当に宇宙人だったのか狂人だったのか(多重人格?)を曖昧な描き方にしてるのが上手いと思った。自分は宇宙人説を採るんだけど、理由は誰も解明できてない琴座星雲の惑星の軌道の謎を彼だけが知ってたから。だとすると、前半でパウエル博士が何でプロートに入れ込むのか聞かれて「自分が選ばれたような気がする」って答えるのが伏線になっており、ロバート・ポーターもプロートに選ばれたんだね。

随所に光の演出が散りばめられてて、冒頭のプロート登場シーンに始まり、置物のガラスの光のスペクトルや太陽の逆光が印象的に登場する。おそらく光は「救い」の象徴となってて、彼の存在によって精神病院の患者に光がもたらされるんだよね。そして最後はニーチェの永劫回帰思想と共にパウエル自身も救われるのがジーンと来た。
たく

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