たく

恋するプリテンダーのたくのレビュー・感想・評価

恋するプリテンダー(2023年製作の映画)
3.5
完全にシドニー・スウィーニー目当てで鑑賞。絵に描いたようなボーイ・ミーツ・ガールで、予告編を見て「嘘から出た実」的な話だろうなというのは大体予想が付いてたけど、そう単純な話じゃないというところにヒネリが効いてた。ウィル・グラック監督は「ピーター・ラビット」でも男女の些細な行き違いをコメディタッチで描いてて、本作は彼の得意分野という感じがした(この監督は「小悪魔はなぜモテる?」も撮ってたんだね)。自分的には時間潰しとして観る映画だったかな。

お漏らし寸前のビー(ベアトリス)の苦境に偶然居合わせたビルが彼女を救ったことで、二人が夜通し語り合い抜群の相性を見せる序盤。もうここで話が終わってるじゃんと思ったところで、翌朝にビーが黙ってビルから去るところに彼女の恋愛に対する恐れが示される。一方で超イケメンのプレイボーイのビルも、過去の痛い失恋を引きずってて恋愛に本気になれないのが、停滞した男女がお互い一歩踏み出せるかというお膳立てが揃った感じ。

些細な誤解ですれ違った二人が近しい縁で再会するのがご都合展開で、結婚式を成功させるために周囲がわざと気不味い二人をくっ付けようと小芝居を打つのが暖かくも鬱陶しい(この演出は「かくも長き不在」を思い出す)。「タイタニック」の振りから最後にもう一度救助隊を使うのが感動演出だけど、救急車をタクシー代わりに使う日本での逸話を思い出してちょっとモヤモヤした。

シドニー・スウィーニーとグレン・パウエルが身体を晒しながらの体当たり演技なのが、おバカ映画的な位置付けの本作にはちょっともったいない感じがした。序盤からシェイクスピアの引用に始まって人生における格言的な言葉が挟まれて、調べると本作はシェイクスピアの「から騒ぎ」がベースになってるんだね。邦題は「恋するふり」と「プリテンダー」を重ねるセンスがまあ酷い。
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