エノケンのミュージカル時代劇なのだが中川信夫が監督やってると気がつかなかった。エノケンの身のこなしと喋り方間については今見ても通用する小気味の良さ。当時大人気だった浪曲師広沢虎造の浪曲がナレーションとして流れ、気持ちよく見てしまう。

• #エノケンの森の石松

最初のエノケン✕中川映画。この後同じ年に『頑張り戦術』『弥次喜多』と続く。虎造の浪花節に乗って進む石松代参で、もちろんエノケンらしい楽しい歌やギャグ滑稽もあるにはあるが、基本、浪曲から大きくはみ出すことなく筋を語る作りである。やはり一番の見所は金語楼との三十石船のくだりだろうか。ここの金語楼は見もの。終盤の水車小屋まわりのチャンバラは殺伐として生々しく、名手唐沢弘光の撮影も冴えわたり、本格的な時代劇映画の画面を見せて息を呑む。

これはいいエノケン