Omizu

アデルの恋の物語のOmizuのレビュー・感想・評価

アデルの恋の物語(1975年製作の映画)
4.5
【1976年キネマ旬報外国映画ベストテン 第7位】
フランソワ・トリュフォー監督作品。全米批評家協会賞ではイザベル・アジャーニが主演女優賞を受賞、アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされた。

これまた凄まじい作品。この年は第3位に『トリュフォーの思春期』が入っているが、個人的にはこっちの方が好き。

イザベル・アジャーニの狂演には心動かされた。愛する男を想うあまりに崩壊していってしまうアデルをこれ以上ないほど見事に演じていた。

しかもアデルは『レ・ミゼラブル』などの文豪ヴィクトル・ユゴーの娘。実話に基づいているというのも大きな驚き。

美術、衣装が素晴らしく、当時の風俗を再現した空気感が存分に味わえる。その中で狂気に染まっていくアデル。そこまでするかという行動までとるように。

ボロボロの赤いドレスで徘徊する姿が切ない。ピントン大尉に拒否され続けるアデルの静かな狂気。恋の盲目、というのを遥かに超えた言動が危なっかしい。

強烈で苦しい傑作。トリュフォーってこういう映画もつくってるんだ。あまり合わないと思っていた監督だけど、少し見直した。他のも観てみなければ。
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