名匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督が、『昨日・今日・明日』に続いて、ソフィア・ローレン&マルチェロ・マストロヤンニとタッグを組んだロマコメ。
「幸せを知らない人間は泣けない。」
離婚が法律で認められていないことをモチーフにした、イタリア式結婚狂想曲。元娼婦の女性が、20年にわたって内縁関係を続けている金持ちプレイボーイと結婚するべく、あの手この手で奮闘する物語。
男のエゴと女の忍耐を強調した、イタリアンネオ・レアリスモ風シンデレラストーリーといったところか。想像以上にウエットかつ悲劇的な作品だった。個人的には、『昨日・今日・明日』のようなカラッと笑える陽気なイタリアンコメディの方が好みなのだが、マストロヤンニとソフィア・ローレンの演技合戦は見応え十分。当然と言えば当然かも知れないが、数え切れないほど共演しているゴールデンコンビなのに、役が違えばちゃんと別人に思えるから凄い。
逞しくしたたかに生きる元娼婦を演じたソフィア・ローレンの存在感が抜群。17歳から39歳までを一人で演じ切っており、その表現力の豊かさには舌を巻くばかり。やっとのことで掴んだ幸せを噛みしめるかのように、はらはらと落涙するラストの表情が実に味わい深い。
あと、魅力的だったのは、メインのロケ地として使われているナポリ、ジェズ広場周りの景観。重厚感のある石造りの街並みが、ナポリの歴史を感じさせてくれる。
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