トシオ88

ブルーベルベットのトシオ88のレビュー・感想・評価

ブルーベルベット(1986年製作の映画)
4.0
この間、夏晴れの晴天の木陰の下、公園で外ランチをとっていると足元に何やら蠢くものが…。よく観ると蝉の死骸に沢山の蟻がたかり、死骸自体が黒く蠢いていた…そうまるであの「ブルーベルベット」のプロローグのシーンみたいだ…。

デヴィッド・リンチ監督の不朽の名作。
前作「デューン・砂の惑星」の興行的大失敗により傷心且つ立場の危うくなったリンチ監督が初心に立ち戻って監督した作品でもあり、スポンサードする大プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスからは予算の大幅カットをされながらも、全ての出演者が脚本に惚れ込みミニマムな報酬で出演。公開後のネガティブな評価がやがて賞賛に変わり、最後は見事に栄誉を獲得し、エバーグリーンな映画になったというエピソードを知ると、ますます名作としての本作が好きになる。
私生活での長いドラッグリハビリ明けの鬼気迫るデニス・ホッパーの演技や、イザベラ・ロッセリーニの下手するとスーパーモデル時代に勝ち得た名声を全て失う危惧もある捨て身の演技、そしてリンチ監督の常に緊張感のある不穏な演出の妙が、明るい素朴なアメリカ田舎町の裏に蠢く、どす黒くて果てしなく暗い、暴力とSEX、そしてドラッグの危険な空間をよりリアルに感じさせてくれる☠️

監督自らが本作制作後に、「面白い映画は、時代を超えていつまでも新鮮で、何度でも見たくなる作品だ」とインタビューに答えていたけど、全くその通りだと思う。
あの青いベルベットが開幕と終幕に滑らかにねっとりと波打つシーンを観ると、この非凡な才能を持つ監督が、また新作を撮ってくれないかと切に願ってしまう🎬😢。
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