オオハラメグ

ブエノスアイレスのオオハラメグのレビュー・感想・評価

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)
4.3
ウォンカーウァイがアジア以外を描いたものを初めて観た。かっこいいところが山ほどあってもうウォンカーウァイは美しく撮る以外知らないのでは無いかと思うほどだった。

それにしても2人のやり取りがあまりにもハイコンテクストで難しかったというか、私の中にまだ足りないものがある気がした。

2人はお互いに独りよがりで不器用だったし、それ故に見るからに不幸そうで観ていて刹那的な印象を受けた。"そんな2人をこれ程までに美しい映像で描写するのには何か意味があるのではないか"と勘繰り脳みそを回転させた自分は野暮で稚拙なのだろうと思う。

それでも2人が人生を交差させるのは私にはただただ情があるからに見えたし、"好きの反対は無関心"という手垢がつきまくってしまった言葉が意外と正しい気がするように、彼らは好き過ぎるあまり意識し過ぎたのかもしれないなと思った。実際私にも相性は合わないが情がそれを上回るが故に一緒にいる友人がいて、一頻りその人への感情が分からなくなってこれは恋愛感情なのかもしれない、と思っていたことを思い出した。その時の感覚の根底にあったのは自分の不安定な気持ちを真っ直ぐに測り知ろうとする姿勢であってその純度は確かに高かったと思う。でも恋愛関係について私はまだ未熟過ぎて言えないことが多いです。

最後のえらく能天気なhappy togetherも、割とあっさり描かれた世界の果ても観ていて"リアルな人生の深み"ぐらいの安っぽい言葉しか出てこない自分がかなり悔しくて、この映画で感じたことをあまり巧く言語化出来ないのだけど、観ていて確実に自分の引き出しの中にあるかなりエモーショナルな部分を感じたのは事実です。

有名なタンゴのシーンの強さ凄かったな、ドランの『トムアットザファーム』のダンスシーンはこれから影響受けたのかな。
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