アキラナウェイ

ブエノスアイレスのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)
3.7
少しずつ、ウォン・カーウァイ監督作を開拓中。

香港の地球の裏側。アルゼンチンの首都、ブエノスアイレス。「やり直す」為の旅だったのに、喧嘩別れした2人の男。何度も復縁を迫るウィン(レスリー・チャン)。そんな彼を拒みながらも、怪我をしたウィンが居た堪れず、彼の介護をするファイ(トニー・レオン)。

屋上から見上げた空の青さ。
黄金色の夕焼けを反射するアスファルト。
アルゼンチン、ブエノスアイレスの街並み。

色彩の美しさに都度感嘆の声が漏れそうになる。

喧嘩ばかりだったのに
幸せだったと言う。
半ば追い出した恋人の事を想い、悲しみに耽る。

耳は目より大事。
声は心を表す。
散りばめられたエピソードが俊逸。

ファイが親しくなった後輩チャン(チャン・チェン)との別れのシーン。
握手をしたり、ハグをするシーンで
ほんの一瞬、映像が止まるのはファイの心の機微を表すかのよう。

複雑な心模様をトニー・レオンが見事に演じている。

冒頭はモノクロで始まりながら、
ウィンの「やり直そう」の一言で
カラーに変わる演出。

アルゼンチンの地球の裏側にある香港。
香港の映像を上下逆さまに映し出すセンス。

イグアスの滝を描いたランプのシェードに
描き足されたであろう2人の影。

その存在の大きさに気付いた時に
その彼が隣にいない悲しさ。

どこまでもエモーショナル。
ウォン・カーウァイは流石だわ。