このレビューはネタバレを含みます
ブエノスアイレスで足止めされる、ゲイカップルの話。
ウォン・カーウァイ作品の特徴と言えば、台詞ではなく、映像で物語るところにあると思うのですが、本作もまた画力を感じさせる作品でしたね。
特に本作はモノクロの画面がある事で、色に頼らない構図やカメラワークの面白さをより感じたし、カラーになれば、なったでブエノスアイレスのエキゾチックな雰囲気を存分に味わう事が出来ました。
物語的には、ゲイカップルの復縁と別れが描かれます。
てっきり異国を舞台にした情熱的な恋愛が描かれるのかと思いきや、むしろ倦怠カップルものと言いますか、2人がケンカばっかりしているんですよね。
だから言って、別れられるかと言うと、別れられない。
そんな終わり間際の、惰性で付き合ってる様なカップルが描かれるのは意外だったし、世話をしている側の方が支配欲が強いというのも面白かったです。
ただ、後半になると、カップルの片方が登場しなくなり、仕事仲間だった男の話が描かれるので、どうも作品自体がグダついてしまった印象を受けました。
後で調べると、ウィン役のレスリー・チャンがスケジュールの都合で途中離脱。
その代わりに、チャン役のチャン・チェンの出番が増えたんだとか。
なるほど、そういう事情があったなら、こういう作りになっているのも頷けますね。
まぁ、どうせなら、ファイとウィンの恋愛を最後まで見届けたかった気持ちもありますが、このグダグダした感じもまた本作の煮え切らない恋愛観と通底するものがあり、本作らしい展開だったのかな…という気もします。
主演俳優の離脱というトラブルも、アドリブで切り抜け、1本の映画として完成させてしまう。
まさにウォン・カーウァイにしか作れない、彼の作家性が発揮された一作と言えるでしょう。