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サイコの消費者のレビュー・感想・評価

サイコ(1960年製作の映画)
4.6
・ジャンル
サイコスリラー/ホラー/サスペンス/スラッシャー

・あらすじ
アリゾナ州フェニックスに暮らす女性マリオンは恋人サムとの煮え切らない関係に嫌気が刺していた
彼が出張で街へやって来る度に昼休みの合間を縫ってホテルで逢瀬を重ねる日々…
彼女は結婚を望んだがサムは亡き父が残した借金や元妻への扶養料の支払いに追われ渋っていた
そんな状況下でマリオンは勤め先の不動産会社の顧客キャシディが現金で支払った4万ドルを銀行へ預けるよう指示を受ける
しかし魔が刺した彼女はその金を持ち逃げ
サムとの結婚資金に充てようと企てて彼の元を目指し姿を眩ませてしまう
逃亡の道中、彼女はモーテルに宿泊し1人の男と出会った
彼の名はノーマン、モーテルの主人である
気は弱いが優しく見える彼と話す内、金を返そうと思い直すマリオン
しかし些細な会話から怒りを買いノーマンは彼女を殺害
そんな事を知る由もなく遺されたサムと彼女の妹ライラは横領の件で彼女を追う私立探偵アーボガストと共にマリオンの足跡を辿っていくが…

・感想
ロバート・ブロックの同名小説を原作に鬼才アルフレッド・ヒッチコックの手掛けた代表作の1つとして言わずと知れた名作スリラー作品
後に彼の手を離れシリーズ化し今作も含め計4作、そしてリメイク版1作が製作されている
「スクリーム」シリーズを観るにあたりオマージュ元の1つとして予習する為に鑑賞

ヒッチコック作品を観るのは今回が初めて
本作に関しても有名なマリオン殺害のシーンくらいしか知らなかった
しかしむしろそれ以降こそが思った以上に重厚な作品だった
あくまでスリラーやサスペンスという軸を崩さず進行していくストーリー、連続殺人を描きながらも殺害描写に重きを置き過ぎず「サイコ」というタイトル通り狂気を紐解いていく展開

それらの中で特徴的だったのが見せる部分と見せない部分の取捨選択
ゴア描写は僅かでキーであるノーマンの母に関しても正体や姿は終盤まで明かされず声のみが流される
金を持ち逃げしたマリオンにしても逃亡中、想像の中で彼女を追う周辺人物の会話が交わされるのみで実際のそれは映されない
そうして焦らしていく中でノーマンの狂気は鳥の剥製や母への愛憎という形で少しずつ示唆され、マリオンの焦りや揺れる心もまた主に表情と前述の想像で表現

展開への興味をじわじわと惹きつけた上でクライマックスのシークエンスに至るとそれまでが嘘の様に全てが露わにされていく
結末は呆気ないと言えば呆気なくラストは最初やや説明的過ぎる様にも思えた
しかし彼の過去や背景、心理の説明が進んでいくとそれが必須である事が分かる
複雑に入り組んだ狂気の全貌を語る事でより恐怖が増幅される為だ

極めて繊細且つ巧妙に物語へと引き込んでいく展開、語り口調や表情から生々しく映し出される感情や人物像…
とにかく無駄がなく緻密な計算の元で構築された世界観は名作として語り継がれるだけあるな、と
惜しかった点も母の声くらい
不安なのはヒッチコックが監督を、昨日鑑賞した「シェラ・デ・コブレの幽霊」を監督したジョセフ・ステファノが脚本を務めた今作の続編に両者とも関わっていない事

ホラーやスラッシャーでシリーズ化され製作者が変わると回を重ねる毎に駄作化していくのが世の常
それも3作目では人気に味を占めたのかノーマン役のアンソニー・パーキンス自らが監督しているというのが…w
せめてあまり劣化していない事を祈ります…
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