シュローダー

ヘヴンズ ストーリーのシュローダーのレビュー・感想・評価

ヘヴンズ ストーリー(2010年製作の映画)
4.5
この映画を観て最初に思い出した映画は「ツリーオブライフ」である。何故ならば、撮影手法も、テーマも、非常によく似ていたからだ。まず、撮影。手持ち多めの長回しがこの映画の撮影の基本だ。酔う事は全くなく、寧ろ自然の光景をありのままに写すのが美しい。中盤の、サトが団地の階段をダッシュで登る場面などは、映像そのものが躍動していて、非常にハッとさせられた。そして、物語の方も、手加減なしで心を締め付けてくる。まず、前半2時間の、罪に人生を狂わされた人々の描写からして、もう凄まじい。印象に残るのはやはり、「家族を殺された人間は幸せを願っちゃダメかな」「ダメだと思います」のやりとり。今まで観てきた映画ではありえない価値観である。そして、そこから後半部、罪を確かに贖おうとしている人間に対する復讐という名の私刑が、またしても悲劇を呼んでしまう展開。瞬きの暇さえ与えられない怒涛の展開。ここで「ツリーオブライフ」と共通するものが現出する。即ち「太陽=神」の視点だ。この映画では、悲劇が巻き起こるのは常に青空の下であり、神が見守る最中である。特に、トモキがクライマックスで空を仰ぎながら走馬灯を見るのは、この太陽と神の関係性を端的に示している。そして、ラストのラスト。やはり青空の下で、この世とあの世が繋がり、救いと赦しが巻き起こる展開も「ツリーオブライフ」のラストと同じである。誰もが簡単に殺人の被害者にも、加害者にも成りかねぬ薄氷の時代。この時代に、真にもたらされる「赦し」とは、「天国」とは何か? その答えが示されるエンディングソングは、4時間この映画に付き合った事もあってか、涙が出てしょうがなかった。この映画のテーマを何とか2時間にまとめたのが同監督の「楽園」であったが、僕はこの4時間でしか描けないものが、確かにこの映画には刻印されていたと、はっきり思う。それ故に、あらゆる人間に観て欲しい映画である。