垂直落下式サミング

サウスパーク/無修正映画版の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

5.0
「浮浪者なんか無視しよう!」

最初はそう歌ってるのに、クソガキたちは映画をみるために浮浪者に小金をつかませて俗悪な映画の世界を満喫るんるん気分。親や先生に怒られて止められても、「黙れチンポしゃぶりのケツなめのアンクルファッカー!」という最低のボキャブラリーは、いろんなもんを掻い潜って、レイティングを貫通して、子供の耳に入ってくるのだ。ばかやろう。そういうわけよ。
クソガキが浮浪者を食い物にするとかどうなのって感じだけれど、他のアニメだと浮浪者とか障害者は、そもそも主要人物どころか端役にもあまり出てこないじゃないですか。のび太くんやクレヨンしんちゃんのお友だちに、ティミーみたいな子はいないじゃん。テレビアニメでやるには、ちょっと危険だから。
でも、サウスパークには、ユダ公も、黒人も、貧乏人も、知的障害者も、同じ学校のなかにいる。それはこの街に住んでいる人は、どんな人だって透明にしないし、居ないことにはさせない。そういうアニメ製作者たちの姿勢であり、同時に優しさでもある。優しさは言い過ぎかな。なんにしても、下劣アニメなサウスパークは進歩的な集合体を描いてるってことです。
劇場版のストーリーは、下品な映画に主演してFワードを流布し、公序良俗に反したとして処刑されることになったカナダのコメディ俳優を救うため、サウスパーク小学校の4人組が立ち上がる!いつものノリ!
死んで地獄めぐりをしたケニーが、ひっちゃかめっちゃかになった事態を最終的におさめることになるのも、古典的な聖痴愚の物語のフォーマットに則っていて、一本の映画としてのストーリーを重視した作り。劇場版としての特別感を担保するものとしている。アバレ散らかしていたテレビ版と比べると、苛烈さはおとなしめではあるか…。
てか、天国人口すくな!4桁っ?!逆に誰が行けるの?みんなそろって地獄に落ちてお祭り騒ぎじゃ!ヒトラーはわかるけどガンジーも一緒くたに落ちている。そして100才まで生きた伝説的コメディアンのジョージ・バーンズも地獄行きっ。なんの恨みがあるんだ。白か黒か。真ん中とかないんか?ピエロ殺人鬼のジョン・ウェイン・ゲイシーはわかったけど、ジェームズ・スチュワートも一瞬出てるらしい。だから、なんでだよ。そして、地上を夢みる赤鬼サタンはフセインの愛人。アイラブユー。これがほしいんだろ…。
P&T処刑の日に、アメリカ軍、保護者たち、地獄、サウスパークの子供たち、各々が思惑を胸に運命の瞬間に向かっていく高揚感が、特別感を出していてとても映画的。
愛しのウィノナ・ライダーも出演している。ピンポンショー。これ怒るだろ絶対。有名人とかそのまんま出してくるし、訴訟どんとこい。イカれてる。
最近トランプ政権の頃のやつをさかのぼって観たんだけど、尖り散らかしてんだもんな。ギャリソン先生がカツラを装着するところとか。天才だと思った。
これは、良識ある大人がみるものであって、子供にみえるところにデカでかとおいとくもんじゃないし、マトモな親ならみせんなってのは同意ですけども、完全に目を隠してしまっていいかってなると違いますよね。社会性がある話題ほどエログロで誤魔化すのは、知的コメディーの作法らしい。分別ある人もない人も、楽しいし可愛いから、いっぺんみてみるのもいいんでない?
かといって、あんまり過激すぎるのもね…。未だにノンデリカシー人間が抜けきらない。多感な時期に、こういうコンテンツに傾倒したら、こういう人間になる。それは自己責任。「機嫌悪いの?生理臭いもんね。」とか平気で言えるやつの出来上がり。終わってんだよ。