ベビーパウダー山崎

イディオッツのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

イディオッツ(1998年製作の映画)
2.5
おそらくラース・フォン・トリアーは善心ってのは知恵遅れかキチガイにしか備わっていないと頑なに信じていて、だからこそ俗まみれの「普通」の人々が惨めに死んでも底なしの不幸になってもまったく構わないと本気で思っている。たまにこういう極まった思想で表現している作家がいる。死んだ者しか報われない的な考えのエドワード・ヤンとも案外近い気がする。
90年代の悪趣味。障がい者のふりして知らない他人に迷惑かけまくる、今さら見ると『jackass』とかジョニー・ノックスヴィルの老人ドッキリあたりとそう変わらない。わざわざ枠組み作って不快感を演出しているので、言い訳ひとつカマしている分だけ真面目だなと思った。道徳や倫理に悪態つきながらも子どもを失った女性のドラマで幕を引くのは、どれだけ不謹慎に寄せてもこれが「映画」(大衆ありきの芸術)の限界。運命に飲み込まれた被害者の女性が属する世界に抗う映画ばかり撮っているトリアー。すべてが鬱病のリハビリ。