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落穂拾いのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

落穂拾い(2000年製作の映画)
4.5
【洞察力と奇跡に圧倒!】
この前のカンヌ国際映画祭で注目されたアニエス・ヴァルダ。彼女の旧作がアンスティチュフランセで上映されるとのことだったので観てきた。

ドキュメンタリーは撮影者の主張が強くなり過ぎないように、基本的に映し出されるモノに手を出さない。例え、レンズを超えて被写体に迫っても客観性を失わないようにするのが定石となっている。

しかし、アニエス・ヴァルダは全力で被写体に迫る。更には自己愛が強すぎて、自分をも撮って撮って撮りまくる。通常の作品なら、禁じ手もいいところで酷評ものなのだが、何ということか、非常に論理的な作品で面白かった。

というのも、このドキュメンタリーは運に恵まれていた。それ故に、単純な現代の貧困に対する愚痴に留まることなく様々な世界を観せてくれた。

このドキュメンタリーはタイトル通りミレーの油彩画の話です。「落穂拾い」とは貧しい者が、畑などからおこぼれを頂く様子を描いている。1857年に描かれた絵の世界が約1.5世紀後の現代でも続いていることを地方と都市部での「落穂拾い」比較を交え描き出す。法律でも言及され、認められている「落穂拾い」。アニエスはケチになった地主や都市部の人に文句を言いつつも、しっかりと落穂拾い「する側」「される側」、「貧しき落穂拾い」「富める落穂拾い」を均一に描き出す。

そして、面白いことにドキュメンタリーを撮るうちに偉人の曾孫や落穂拾いするミシュラン料理人、珍しい絵画にたどり着く。

アニエス・ヴァルダの語り口の豊かさ、そして洞察力に感情的でありながらも論理的な「落穂拾い」にノックアウトされました。
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