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散歩する霊柩車のfilmoutのレビュー・感想・評価

散歩する霊柩車(1964年製作の映画)
3.9
不謹慎で痛快なブラックジョーク。
序盤から独特なショットの連続でシリアスとコミカルを軽妙に行き来する。監督の佐藤肇の事は知らんが、、、と思ったけど『黄金バット』も『吸血鬼ゴケミドロ』も観ていてなるほどと。

寅さん役でない渥美清と西村晃、春川ますみら役者の個性が際立ちながらも一つ一つのショット、アングルが美しい。
例えばマンションの下にある階段のコントラストの強い陰影や遺体安置所の薄暗い不気味さ。それと視点を斜めに据えたカットも目立ち、登場人物それぞれの言動や思惑がストレートではないと示唆する。後半、誰が勝ち逃げしようが別に構わんよという気にもなってくるがニヒルな終わり方含め全体的に巧すぎるほどまとまっている。

あらすじには「グラマー女房の浮気に悩まされる小柄な亭主が、浮気の相手から500万円をユスリ奪ったことから続発する事件を、エロチックなムードで描いたコミック・スリラー篇。」とあり、更に「小柄な麻見に対して、妻のすぎ江は大型な豊満な女性であった。すぎ江は、タクシー運転手の夫の留守に、医師の山越、初老の北村、ハリキリボーイの小倉と、浮気心を満足させていた。」という絶妙な語彙の文章が書かれており期待値が上がる。しかし大体こういう紹介だと内容はそこまで面白くないというのがほとんどという印象だがこの作品はキャラクターとしても映像としても物語としてもそれを越えていて楽しめた。
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