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オフサイド・ガールズの最高のネタバレレビュー・内容・結末

オフサイド・ガールズ(2006年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

オフサイド・ガールズという邦題は、映画の本質を反映していないと感じた。
イラン語は分からないんだけど、多分、英題の「Offside」が多分映画が描こうとしているものに近い。

この映画は、サッカー観戦を題材にしているけど、スペクタクルの対象としての「サッカーのシーン」はほとんど出てこない、極めて特殊な映画で、唯一サッカーが見れるのは、街頭テレビの中の小さな映像や、ラジオの中継としてしか描かれない。
オフサイド・ガールズというタイトルだと、サッカーが見れない女の子たちが主人公のような印象を受けるんだけど、実は主人公は女の子でも、それを警備する軍人でも、女の子の父でもなくて、映画の観客自体がサッカー観戦から「Offside」させられる、稀有な構成を取っている。

この「Offside」具合が絶妙で、観客は主人公っぽい(彼が日本戦の事故で亡くなった7人のうちの1人だったと、本当の最後に明かされる)女の子や、その父に感情移入しようとすることもできず、家畜の面倒を見なければいけないが、いやいや会場警備に駆り出された軍人にも、それ以外の女の子にも、感情移入ができないまま、物語が進んで行き、最後は全員がバスから抜け出して、誰もいないシーンで終わってしまう。

サッカーのシーンを撮れないとか、予算とか、当局の監視とか、いろんな撮影時の制約があったのかもしれないけど、それを逆手にとって、スペクタクル要素がほとんどないのに、最後のがらんとしたバスが妙に印象に残る、脚本の妙を感じる出色の出来だった。

2006年の作品ということだったけど、なんとなく日本の70年代や60年代を感じさせるようなイランの庶民の熱気も感じられて、国民の一体感みたいなものがあるのも、よい感じ。(この勝利した後の喜んでいるイラン人の姿が唯一のスペクタクル的な要素かも)
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