このレビューはネタバレを含みます
不機嫌で感じの悪い、一見我儘な女の子だけど、男に頼らないと生きられない芸者の母を憐れみ、自分は男に頼らない女であり続けようとする高峰秀子、本当に良い。「女に男はいらないって本当ですか」という台詞を受けた時の表情……。でも高峰秀子は、その反語的でさえある問いに対して、「いらない」という答えを証明するかのようにミシンで内職を始める。ラスト、その後に耐え難い転落が待ち受けていることを観客であるわたしたちは知っているのに、ミシンに打ち込む高峰秀子や、改めて腰を据えた山田五十鈴、三味線なんて適当で良い、と笑っていたのに凛とした座り姿で山田五十鈴と向き合って三味線を弾く杉村春子が交互に映されるシーンに、美しくはないが泥臭く逞しく生きる女たちの姿を観て、ほんの少し希望を感じてしまう。
彼女たちの住まいは大きな川の畔であり、度々その広く平坦な川を映したショットが入れられる。川の流れは不可逆で、そのことと同じように、ただ日々は続き、どの時にもどの地点にも戻れない。目の前にある日々を生きていくしかない。作中、彼女たちはその流れを粛々と受け止め、流され、流され、でも決して逃避しようとしない。その、生きることをはなから諦めていない芯の強さのようなものがラストを悲観的に見せなかったのかもしれない、と思う。