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アンナ・マグダレーナ・バッハの日記のあのレビュー・感想・評価

4.5
「今年は天候がいいから葬式が少なく、仕事がない」ドイツの冬は厳しいぜ...

アンナ・マクダレーナがまた夫に作ってもらった曲弾いてるよ、気に入ってるのかな、と呑気に考えていたら、子供が2人死んだと当たり前のように言われて、改めてあの広い部屋の残酷さが身に染みました。あの子供も死んだのでしょうか?

バッハの足跡が複雑すぎたり、子供や知り合いが多すぎて誰が誰だか分かりませんでしたが、そういうノイズを徹底的にスルーして、バッハの背中をずっと見守り続けたアンナ・マクダレーナの眼差しにフォーカスし続ける思い切りの良さが成功していました。現代の夫婦観にはそぐわないのかも知れませんが、これもこれで「夫の背中を見て、その音楽を聴けば分かりますわ」と言い切る『寡黙で誇り高き妻』だったということでよかったのだと思います。

最後視力を失って窓辺に佇むバッハと、それに寄り添うアンナ・マクダレーナの眼差しが一番印象的でした。最小限の労力で、最高級の被写体への拠り方を見せた映画だと思います。ただ、これ以上削ぎ落としたら何も分からなくなるような気がしました。以後の作品を観てるから特にね...

あと書物の景色と大聖堂や自宅などのロケ地を繋げる構成も面白かったです。本が動き出したみたいでした。
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